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眠る虫の一のレビュー・感想・評価

眠る虫(2019年製作の映画)
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バスは人を運ぶ、人はモノを運ぶ、モノには人の思いが積もっている。カセットテープやフィルムや絵といった記録物にはもちろん、石にも、手袋にも積もっている。幽霊の声というモチーフには、佐藤真『SELF AND OTHERS』を思い出す。あれの最後に聞こえてくる牛腸茂雄の声は幽霊の声だったし、写真に残された死者の風景を追想する映画だった。『眠る虫』でもモノに堆積した風景が立ち上る瞬間がある。で、残された者がそれを投射する。音楽として、映像として、光る眼から放つ。光も風も、超現実的な表現がしっかり感動的ですごくよかった。映像と不可分に耳を釘付けにする音響や劇伴もとても豊か。モノへの思い入れと同時に、生きている人間の面白さも噛み締めたくなる。
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