スカポンタンバイク

バビロンのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
2.2
これまでのデイミアン・チャゼル監督の映画は、私としてはどれも好きな作品でした。
ただ、今回の「バビロン」は全然ダメでした。ただ、観て良かったと思ったのは、これは実は今までの作品からも一貫してあったデイミアン・チャゼル監督の弱点が煮詰めた形で出た結果なんだなとわかった事です。
端的に言えば「キャラクターを描けない」という事です。基本的にデイミアン・チャゼルの映画はどれも登場人物がその映画内で語るべきテーマが託された存在以上でも以下でもないという単調なものになっています。例えば今作に一番近い「ラ・ラ・ラント」で言うと、「ラ・ラ・ラント」でのライアン・ゴズリングは「過去のジャズミュージックが好きな懐古的なミュージシャン」でエマ・ストーンは「これから活躍していきたい今を彩る女優の卵」というキャラクター設定があり、それ以上にキャラクターを深める+αはほぼないのです。それは本来ドラマや回想などによって深みを持たせていくものなわけですが、チャゼル監督はそういう事はほとんどやっておらず、語りたいテーマでこうあってほしいキャラクター像と行動だけで構成されています。それでも、これまでの作品はチャゼル監督の軽快な撮影と話回しで進めてくれていたから、そういうキャラクターの物足りなさには目が行かずに済んでいました。
しかし、今回のように3時間に渡る群像劇風のようにされてしまうと、キャラクター性こそが原動力なわけでそこに目が自然といってしまったという事だと思っています。それによって、これまで見られずに済んでいた弱点が完全に浮き彫りになってしまったのかなと思っています。

正直、他にも言いたい事だらけなのですが、本当に言い出したらキリがないので、端的なものを以下にまとめて終えようと思います。

・構成がやたら「ブギーナイツ」で、PTA好きの私としてはノイズで仕方なかった。出直してこいという感じです。

・サイレント映画の撮影現場の騒がしさは分かりましたけれど、その結果として生まれたサイレント映画の良さが全然伝わってこなかったです。だったら、前半1時間は全部無しで、トーキー突入からの没落だけを描けばいいじゃんと思いました。地獄のような映画になるかもしれないですけれど、2時間で終わる儚い御伽噺のように仕上がったと思います。

・ブラピのトーキー以降の展開は納得いかない。没落の展開をやりたいがためにセカンドチャンスの話を出さなかったようにしか見えない。落ち目になった俳優が別のやり方で返り咲くことだってあるだろうよ。てか、あれで笑う観客の意味が本当に分からない。キムタクが80年代ドラマの感じを未だにやってても、それ笑わないだろ...。

・ラストのモンタージュにも言いたいことはあるけれど、あそこで終わってくれれば良かった。その後に冒頭でのセットの良さを話してるシーンを持ってきて、あたかも「映画とは...」とドヤ顔で語りを入れてくる感じが心底「ダッセェ...」と思いました。

以上。好きな人がいるのも分かります。それぞれご意見あって、良いと思います。
少なくとも、「見てよかった」とはなんだかんだで思っています。
ただ、なんと言いましょう。チャゼル監督って物凄く勉強家で真面目という事なので映画好きではあるんでしょうが、この作品の時代に関しては知識以上の思い入れはないのかなと思いました。だから、勉強した結果のレポートを読まされてるような、律儀で真面目なんだけど、それ以上でも以下でもない作品になってしまったなと思いました。