ゴリアテの憂鬱

デルフィーヌとキャロルのゴリアテの憂鬱のレビュー・感想・評価

デルフィーヌとキャロル(2019年製作の映画)
4.4
アラン・レネの『去年マリンバードで』をはじめ、トリュフォーやブニュエル, デュラス, アケルマン等、錚々たる監督の作品に出演したフランスの女優デルフィーヌ・セリッグと、フランスで2番目にビデオカメラを手に入れた人物(一人目はゴダール)で後にフランスにおけるビデオアートのパイオニア的存在となったキャロル・ルッソプロスの出会いと二人のフェミニズム運動を記録したドキュメンタリー。

これは森元首相をはじめとする、日本の残念な男尊女卑脳を持ったオッサン連中には全員強制で観させるべき作品だと思います。

作中でキャロルは、「ビデオカメラは、今まで専門家や組合の代表(それらは皆男性)しか発言する場が与えられなかったところに、当事者の意見(女性など当時、社会的弱者とされていた人達)を伝える機会を与えてくれた」と言っていました。
その言葉だけで、当時の女性の意見がどれだけ男性や社会から軽視されていたのかが想像できます。
(このビデオカメラはソニー製でした。この時代は日本のメーカーも革新的な製品を世に送り出せていたのに)

「シェフがお金を稼ぐ為に作る料理には相応の価値があって、主婦が毎日作る料理には価値なんて全くなくただ作ってるだけ」みたいな酷い発言をするコメンテーターが出てきましたが、今ではそういうことを信じられないと思える社会になったのは、デルフィーヌやキャロルのようにフェミニズム運動に取り組んできた人達のおかげであり、彼女たちの確固たる功績でもあります。

若き日のアケルマンと貫禄たっぷりデュラスが並んでインタビューに答えてるシーンは、何気に凄い画だなと思いました。
音楽で例えると何でしょうか。
Snail Mailとキム・ゴードンが並んでても、アケルマンとデュラスの1/10くらいのインパクトしか出せないんじゃないかと思います。