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三四郎

三四郎の感想・評価

4.5
愛情のよろこびとかなしみを複雑な現代の中に描いたメロドラマ。映画の宣伝文句だが、なるほどうまい表現だ。
この映画、リズムが実に良い!戦前の島津版より背景、構図、流れが良かったかもしれぬ。後味が良い。島津版は恐らくところどころ抜けていて完全ではないのかもしれない。完全保存版があればなぁ。

競馬後日本料理を食べに行く二人。高峰三枝子と河村黎吉の時とは座る位置が逆になってる!
「僕には煩悶がある。悲しいのは僕と君とが30も歳が違うという事実、しかし悲しいという感情は綺麗だからね。もし僕が10も若かったら君に結婚を申し込んでるよ」こういう科白、好きなんだよな!そこで「あら10も若かったらだめよ。ウチ50ぐらいのおじさんが一番好き」三枝子も有馬稲子もいい演技するなぁ。比べてどちらにも惚れ惚れ。高橋貞二とデート中の有馬稲子、和服じゃなくて洋服。これが現代版か…。蚊帳の外と内での会話がまたいいね。
窓下を見る岸恵子…大阪?ってパリみたいだなぁ。「君には恵まれた人にはない影みたいなものがある」「好きなんだ!」なんと率直!戦前版ではなかったなぁ、しかも熱い接吻。
もう老若男女キスキスキス。原作もこうなのかしら。
にしても、本当に大阪の川沿いはヨーロッパみたいな荘厳な建築が並んでる。橋も美しい。
後編からは東京令嬢の岸が洋服で大阪娘の有馬が和服と、対照になっている。戦前版と同じ東京対大阪、洋対和となっていて良い。やはり映画はただのドラマじゃなくて、暗示があったり記号があった方が興味深く、考えさせられておもしろい。一貫した統一感がある方が美しい。
「手握らして」これは島津版の方がいいな、三枝子の方が鬼気迫る感じで。
その後の高橋の食の好みを言うとこは、中村版の方がいいな。勝気大阪娘の最後のお節介。
東京令嬢は飛行機で帰り、大阪娘は列車で帰らぬ旅へ…。上空からの大阪ネオン街と車窓からの大阪ネオン街、この繋ぎは粋だね。
そして自殺は海!このクライマックスはいいなぁ!波しぶきと崖。戦前島津版の三枝子の手紙(遺書)を書くときのぼんやり感と妖婉さ、列車場面も良かったが、戦後中村版も良い。ラストシーンの波に浮かぶ高橋から貰った有馬のハンドバッグは貝のようだ。
東京令嬢とストーカー男の関係は島津版では海だったが、中村版では山。リメイク作品は概して面白みがないが、この作品は成功している!