めんたいこ

ぐらんぶるのめんたいこのレビュー・感想・評価

ぐらんぶる(2019年製作の映画)
1.0
これは不誠実なアンジャッシュ。

本作の最も大きな問題点は視聴者と映画の約束がなされないままグダグダと話が進行する点にある。その他も大変ひどいものだが、この点以外は些末な問題といえる。

破天荒といえば聞こえがいいが、「この世界では何が是とされ、正常と呼ばれる状態はなんなのか」が提示されないままカオティックなストーリーが展開されていくため、学園スラップスティックコメディというよりファンタジーのように映る。日本人がワチャワチャと出ていて現代日本風のセットを用いているが、リアリティラインが圧倒的に描写不足で、常に劇中劇を見ているようなフワフワとした気持ちのまま(誠に残念ながら)エンディングまで突き進む。

そもそも全員大学生に見えないキャスティングはどうなんだ。まともな演技力も要求されないガヤが大半を占めるのだから、少なくともそこは人選でカバーできる部分が大きかったと思う(年齢だけでもだ)。特に学園祭のシーンでは怒鳴り散らすだけでもはや何をしゃべってるのか聞き取ることすらできない。演者としては最低と言えるだろう。

イントロのタイムリープ的な展開やパーティクル芸のエフェクトなど、「面白くなりそうかも」という期待はなんの説明もなく置き去りにし、コント的な(実にTV的な)伏線回収のみに心血を注いでいるように見えた。

そして物語の骨子をなすアンジャッシュメソッド(すれ違いコント)もフリの部分、つまりは主役とその取り巻きの適切な前提が丁寧に描かれていないため、その「すれ違い」が起きているのかどうかが非常にわかりにくくなっている。これは構成として根本的な欠陥といって良い。

また2020年制作でこの性的マイノリティーに対する視座の低さも特筆すべきだと思う。面白くないのは当然のことながらただただ不快だ。そういう感覚は平成において出直してこい。

これほどひどいのは中々お目にかかることができないだろう。個人的2021年ワーストはブッチギリで本作だ。ただし、「あのラーメン屋?あんまり美味しくなかったよ」よりも「もう最低の味だし店主は高飛車だしテーブルは汚いし、絶対行くなよな!」と言われると行きたくなるのが心情というもの。

怖いもの見たさを刺激された諸兄にはオススメです!!