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トルーマン・カポーティ 真実のテープのmajiziのレビュー・感想・評価

3.0
Filmarksのオンライン試写会にて。
ありがとうございます。

「ティファニーで朝食を」や「冷血」で有名なトルーマン・カポーティのドキュメンタリー。

生前を知る彼を取り巻く人たちのインタビューと、当時のカポーティの映像を交えたものです。

未完の「叶えられた祈り」の残りの原稿の行方については、推測や噂話の域を出ず、目新しい進展はありません。

なのでドキュメンタリーとしては山場も無く限りなく退屈に近いですが、彼の原作やその映画を愛する人たちには、興味深いものであることは確かです。

この作品の前に、冷血の執筆活動に特化した映画「カポーティ」を観ましたが、このドキュメンタリーとは異なる印象を受けます。

単なる頭のキレる突飛なゲイで、ハイソサエティの中心的存在となり、セレブでいることに溺れたような堕ちた人間ではなく、物書きの性分であるが故に、自己存在の証明にひどく葛藤を抱えていたことがわかります。

カポーティが作家であることを忘れ、己の秘密や心情が漏れるような立ち位置にまで道化として持ち上げたNYの上流社会の薄っぺらさには笑ってしまいます。

今であれば暴露本とも言える「叶えられた祈り」の内容に激怒し、簡単に追い出すその狭量も、所詮はカポーティを南部生まれの成り上がりと蔑んでいたことに変わりはありません。


カポーティが最も美しく書いたのは、社会の底辺にいる人たちの物語あったことは、空虚なハイソサエティへの裏返しにもみえます。

自分を見失わないために書き続けなさいと養女に話していたこと。
大切にしていたジンジャークッキー。

本質は大胆でありながら、どこまでも繊細な人であったと感じました。
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