さわだにわか

とらんぷ譚のさわだにわかのレビュー・感想・評価

とらんぷ譚(1936年製作の映画)
3.4
長い会話が動きなしに続くと寝てしまう幼児体質の俺はギトリ映画の延々続く座りの会話シーンなど耐えられないのだが会話ではなくナレーションベースのこの映画はシーン替わりが多くとくに序盤はカラッとしたブラックユーモアも面白く何本か観たギトリ映画の中ではもっとも楽しめた。ズルをしたために生き延びた男の辿る数奇な運命。いいね。

とはいえ男が賭場に入り浸るようになってからは同じような画面が続くのでそうなるとナレーションベースは逆にツラい。当時の映画としては革新的と言われればなるほどそうかもと適当に思うものの、今見ても傑作とまで言えるかといえば、基本的に一本調子でさほどツイストが効いているわけでも目の覚めるようなショットがあるわけでもないので、そこまでではないように思う。

それでも満員に近いほど映画館には人が入っていたが、眠くなったのは俺だけではないようで、ほか二人ほど見える範囲で舟を漕いでるのを目視で確認。みんな有名な映画だとか、有名な人(濱口竜介とか蓮實重彦)が褒めてるから騙されて観てるんじゃないだろうか。

そもそもフランス語を理解できる蓮實重彦がギトリのようなフランス語の語りを評価するのは(そこのみを見ているのではないにしても)わかるが、フランス語なんてちんぷんかんぷんのそこらへんの日本の映画好きがギトリの語りの本質的な面白さを捉えられるようには思えない。俺も結局その言葉のチョイスとかニュアンスとかがわからないからギトリ映画で寝るわけで、これが日本の映画で、落語のような調子で語られているのだとしたら、たぶん見入っていただろうと思う。
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