エンタメ作品として楽しめることも大事にされている、性犯罪の多様な罪に深く切り込む秀作。
「あんな告発は男にとって地獄の悪夢なんだよ。」
「じゃ女にとって地獄の悪夢は?」
(セリフ(日本語字幕)より)
※性暴力サバイバーの方は、この映画の存在を知るだけでじゅうぶんかもしれません。
サバイバーの方々の経験を1ミリも無下にせず、真摯な"配慮"がなされている作品です。
しかし、加害者たちの実態を丁寧に描いています…。鑑賞にはご注意ください…。
監督は、パンフレットでのコメントで
「この映画に悪人は出てきません。登場人物達はセックスに対してやや無責任な態度を取る文化の一部に過ぎません。なぜ私たちはこういう態度を取るのか、悪い部分を良くするためには自分たちがどう態度を変えていけば良いのか。そういった根本的なものを問うことが重要でした。」
と語っています。
「自分は何もしていない。」
加害に・犯罪に加担した人間の常套句。
確かに"何もしていない。"
出来るはずのことさえ。簡単なことさえ。
この映画では、それがいかに罪深いことかじっとりと炙り出している。善人とも悪人とも言わない。ただ、加担していることを嫌というほど知らしめる。
加害者の深層心理も色んな意味で容赦なく引きずり出す。私の人生で重なる人物はいなかったにせよ、あまりにも不快で、精神的にキツかった。
そして、女の敵は男という単純で浅はかな対立構造も批判している。
近頃わたしは、シスターフッドという言葉を見かけると、少し後ずさりしてしまう。分断を生む文脈で使われていないかと懐疑的にならないと、それこそ誰かを排除することにうっかり加担してしまうから。
シスターとは誰を指すのか。誰にとってのシスターなのか。
個人的に、"男社会"で"男性"が下駄を履くことに迎合する"女性"とは連帯出来ない。もちろんそういう状況下でその人たちなりの戦いがあるだろう。
でも、だからといって、戦いの土俵にさえ立つことを許されない戦士たちの存在を消してしまっていい理由にならない。
プロミシング・マンの未来ばかり重視されるこの世界で、人生が止まってしまった女性は一体何人いるのだろうか。
被害者を信じること。被害者をひとりにしないこと。
そういう態度を当たり前にしたい。
復讐は悪なのだろうか。許すことだけが強さなのだろうか。
人生は自分次第だなんて、どんな口紅を塗りたくっても言いきれないんだよ。
突然、舵をきれなくなる。
でも、そう思うことは出来るんだ。自由なんだ。
どうかこの権利は、奪わないでくれ。
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#フェミニズム #フェミニスト #差別反対 #ジェンダー