真田ピロシキ

るろうに剣心 最終章 The Beginningの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

4.0
観るに当たって昨日名作アニメの追憶編を鑑賞してから臨んだ。クレジットに名前が記載されているように本作は原作漫画よりも追憶編の実写映画という性格が強い。

しかし追憶編ではかなり剣戟アクションを控え目にされていたのに対して、本作はアクション増し増しで冒頭の対馬藩邸立ち回りからして谷垣アクションのお出迎え。わざと捕まっていた抜刀斎が刀を口に咥える所は「ロ、ロロノア・ゾロ!?」 といきなり不安になったが、始まってみればいつもの高速集団チャンバラでこのシリーズを好きな人であれば安心。また本作は人斬り抜刀斎時代の話なので剣で斬れば血は出るし腕は切断されるわ音も逆刃刀の痛くなさそうなのとは違って重くてエグい。また先述した捕縛シーンでは最初に抜刀斎が相手の耳を噛み千切ってて、最強の人斬り抜刀斎ですらこんななりふり構わなさを求められるのが激動の幕末を表している。そりゃ原作で斎藤が左之助を「所詮明治という泰平の世の中の喧嘩殺法」と酷評するわけですよ。

本作の戦闘シーンの目玉と言えば何と言っても抜刀斎と沖田総司のドリームマッチで、原作では宗次郎のコンパチキャラでしかなくて(そのくせ人気投票はえらく高順位だった)、追憶編でも少し剣を合わせて咳き込んでた沖田が恐らく一番長い尺の戦闘を披露する。やはり速い。宗次郎程ではないが低い構えを度々見せてて、牙突らしき技の構えも斎藤とは違ってかなり上に向けてるのが特徴的。咳き込んだために残念ながら不発。新選組は中盤にはかなり目立ってて追憶編同様に近藤勇と土方歳三も姿を見せて原作のファンでない歴史好きの人でもテンションが上がるかと思われる。ここで面白いのは池田屋に踏み込む時に近藤か土方が参加する幹部の名前を読み上げるのだけれど、その中に武田観柳斎がいて映画見てる人ならガトリングガンぶっ放す香川照之を思い出してしまうでしょう。重い映画の中のちょっとしたユーモア。

追憶編に大体忠実なストーリーで描かれているが、少年時代の剣心と比古清十郎のエピソードはまるまるカット。多少新選組の話を増やしているが映画の尺は追憶編全エピソードを合わせたものより長くてややゆったりしているかもしれない。巴を斬った後に巴との日々を回想するのはちょっとクサくてクドいかな。だが鏡を見た巴が剣心への愛と憎しみを同時に去来する演出は上手いなと思った。それと1ヶ月先にFinalが公開されてた訳だが、本作がFinalと補完し合うような映画かと言うとそうではなくて、縁が目撃するシーンを入れてない。八つ目の生存描写もないため、これだけ見てて原作も知らない人ならば普通に死んでると思う。また追憶編では博打のような生き様と「正月早々ツイてねえぜ」と事切れた死に様が印象的だった内通者の飯塚だが、彼が志々雄に始末されるシーンはなくて安直な考えだと藤原竜也を今度は素顔で出せたのにと思いそうであるが、そういう特定の作品へのリンクを敢えて避けたのかもしれない。唯一やりたかったのはシリーズ最初へのリンクでラストはずっとこのシリーズを見ていた人には震える。まさしく最後にして最初。『ホビット 決戦のゆくえ』のような。10年も経ってるので佐藤健も老けてて設定では一番若いのにそうは見えないとなるのだけれど、年齢的には若いけど人を斬ってばかりいるので老け込んでいる本作の抜刀斎と三十路手前だけれど穏やかな心で若返っている流浪人の剣心の設定が佐藤健が演じてた当時の年齢とマッチしてて、3作目から随分間が空いたが結果的には良かったかと思う。

京都編はあまり面白いと思えなかったがそれでも良い実写シリーズだった。日本の漫画実写化作品のレベルを確実に上げた。これで終わりじゃなくあとに続くと良いですね。