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17歳の瞳に映る世界の821のレビュー・感想・評価

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
4.5
Twitterで信頼してるフォロイーさんがオススメされていたので、これは見に行かねば!と鑑賞。観に行って大正解。去年見た『はちどり』を彷彿させる秀作でした。

本作では主人公オータムを取り巻く状況の多くが語られない。でも、あえて残されている余白にこそ、考えさせられる要素が詰まっていました。
彼女たちにそっと寄り添うような、とはいえ一歩引いた第三者的目線で写される物語。なぜ彼女がその状況に陥ってしまったのか。周りの大人がすべきだった行いはなんだったのか。彼女たちに必要なサポートは何だったのか。とても考えさられました。

居場所のない家庭。中絶反対の立場をとる保守的な土地柄。そこでは必要なサポートも十分に受けられない。
十分な教育や大人の支えがないからこそ、彼女たちは自力で状態を打開しようとする。頼れるのはインターネットと、同世代の友達。心が締め付けられるようなシーンも多々ありました。

そんななかでも、NYでの支援団体は彼女たちにそっと寄り添うような言葉をかける。踏み込んでこないけど、ぬくもりのある目線にも目頭が熱くなりました。原題でもある「Never Rarely Sometimes Always」のシーンはオータムの苦しみが漏れてきて、思わず泣いてしまった。

劇中全体にわたってオータムに寄り添うような視線で写されている中で、彼女たちの優しさや脆弱さにつけ入り、一線を越えてくる無遠慮で搾取的な視線や仕草が異物のように思えました。時には彼女たちを不快、不安、そして傷を負わさせる「異物」の写し方が絶妙で、際立っていたなと思いました。

話は少し変わりますが、上記したように彼女達に付け入ってくるうちの一人が、『ある少年の告白』で完全に心奪われてしまったTheodore Pellerinだったので、すごーく複雑な気持ちで見てしまった…。見かけはめっちゃかっこよくて目を奪われてしまいそうなんだけど、いや、でもそういう役どころじゃないから!と劇中自分に訳のわからん事を言い聞かせていた。ここ、本作の感想として余りにも文脈から外れたものだと思います…。

すごく余白の取り方がうまい、引き込まれる語り口の作品でした。本作は国が違うとはいえ、日本にも今でも病院に行かず生まれたばかりの子供を遺棄してしまったり、頼るあてのない若い妊産婦がいる。
本作はもちろん10代の若い子達にも見てもらいたい作品だとおもうけど、その層に見せることによって「責任を転嫁」するのではなく、彼ら彼女たちに教育の場を提供して、社会の構造を形作り、必要な支援を送ることのできる大人世代が見るべきものだと強く感じました。今を生きる世代として考える責任もあるし、私たちがしっかり向き合うべき問題であると思った。
オータムが見た、異世界のようなNYの街の煌めきが脳裏に焼き付いているなあ。

作品とは関係ないのですが、スクリーン割り振りの都合か、何故かMX4Dスクリーンでの鑑賞でした。もちろん座席が動きはしないのですが、MX4Dから1番程遠い類の作品だと思うので、不思議な気分でした…笑
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