ノラネコの呑んで観るシネマ

世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

3.9
まん丸な体に愛車は古いVWビートル。
月千ドルで生活し、他の収入は全部寄付しちゃうという、ウルグアイの元大統領エル・ペペことホセ・ムヒカの哲学を、エミール・クリストリッツァが描く。
今でこそ穏和なおじいちゃんだが、かつては反体制派のゲリラ戦士。
13年もの間投獄されたこともある。
だがペペは「人間は良いことより悪いことからの方が学ぶ」と言う。
若い頃は、体制を壊すのなんて簡単だと思っていた。
しかし壊すのは簡単でも、新しい体制を作り上げるのはもの凄く難しい。
なぜならそれは文化を作ることだから。 
ここで言う文化とは、芸術活動のことではなく、人間の生き方の規範となる行動原理。
人は社会的な生き物だから、本来分かち合うことの出来る社会主義者のはず。
だが誰にでもある利己的な心が邪魔をする。
政敵を倒すだけでなく、人々の心の変革こそ彼の闘争。
ペペが大統領に当選した当時、ウルグアイの貧困率は39%だったのが、退任後の今は11%に。
こんな弱者に寄り添える政治家が、本来ずっと豊かなはずのこの国にも欲しくなる。
クリストリッツァとのおちゃめなトークも可愛い。