takanoひねもすのたり

罪と女王のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

罪と女王(2019年製作の映画)
3.0
ザ・理不尽極まれり。

アッパークラスの夫婦。
夫ピーターは医師、妻アンナは児童保護専門の弁護士。
双子の娘に恵まれ、自然に囲まれた邸宅で仕事も生活も何不自由ない。
そこに夫の前妻の息子の17歳のグスタフが引き取られることに。
問題児なうえなかなか打ち解けないグスタフをアンナは仕事柄うまく彼を順応させよう導こうとし。距離が近くなった時、アンナはグスタフを意識し始め、彼女は彼と性的関係を持ってしまう。

AV系ではよくあるシチュエーション。
義理の息子と………ってやつ。

このアンナって女が、めちゃくちゃクソ。
冒頭の夫婦の会話に、
「君は一度でいいから、ピーター分かったわ、と言えないのかい?」
と言われるシーンがある。
また、弁護士事務所のパートナーからも、
「君はミスを認めろ。あと感情で行動するのも考えろ、プロ意識が足りない」てなことを忠告されてる。
彼女の性格が「絶対に自分の間違いを認められない」タイプであることが強調。

旦那への不満が募っていたタイミングと比例して急速に関係を深めたアンナは、ある日衝動的にグスタフと関係を結ぶ。

いきなりグスタフの部屋へ→ベット脇に座る→何か触りだす→フェラーリからのGO!ですよ!奥さま!

いや貴女、弁護士でしょう、しかも17歳相手に、更に相手は拒否権が無いにも等しい(ここの住まいを無くせば寄宿舎へ行くしか選択肢が無い)
そんな力関係が介在しているんだから、これ下手すれば性的虐待なの分かってるのでは……。

しかしグスタフがなんのかんのと蜜月な関係を楽しそうにしているのでほっと見守るのもつかの間、彼との関係がアンナの大切な友人に目撃「子供相手に何してるの!おぞましい」と非難され付き合いもカットオフ。
ついで夫がグスタフと2人で親子水入らずで山小屋へ行くと言い出し、グスタフの口から秘密が漏れるんじゃ……と気が気でないアンナ。

果たしてグスタフは山小屋で夫にアンナとの間にあったことを話していた。
夫に問われ、必死で「あったことを」取り繕うアンナ。
そのためには「そんなことを言われる筋合いは無い!侮辱された!」モード全開にする彼女。
こういう私は悪くないムーブするひとは見ますが……フィクションとはいえかなりムカつく絶妙な嫌な女への振り切り具合がある意味あっぱれ(演技力)

グスタフを見下し、拒絶し、冷酷に突き放す。
児童専門弁護士という職業も、この際、武器として機能する。
自分が侵した間違いを決して認めようとしない。
得意の弁舌、怒り任せの衝動さで自己弁護を頑なに守り通し、その際にグスタフがどれ程傷つくのかさえ意識に無い。
いや……貴女、児童専門の弁護士やろが……。

バレたら全てを失う。
その恐怖だけでアンナは躊躇いなく非情な態度に舵を切る。

グスタフは突然拒絶され混乱しアンナの嘘を糾弾するも、彼の反撃は……効かなかった。

複雑なのは夫もで。
おそらくある時点でアンナが嘘をついていることを薄々察したものの、アンナの話を受け入れグスタフの味方にはつかなかった。
(多分その方が家庭を守るという視点からは楽だった)
そしてそれは最後取り返しのつかない形になる。
グスタフを幼い頃に前妻に丸投げした引け目がありその過ちを取り返すため彼を引き取ったのに。
彼は最後に彼が最も必要としていた時の救いの手を出さなかったことを悔いても遅く。
妻が事の次第を告白し始めた時、初めて彼女の口を覆う。弁解を口にするな、これ以上しゃべるな、黙ってろ、聞きたくない、その怒り。

この夫婦もうだめかもな……とラストを見ながら描かれない未来を思う。

冒頭と後半がシームレス過ぎて、犬が出てくるまで意識してなかった。
ここうっかりやられた……笑

グスタフが入れてくれたアンナの腕のタトゥー。
これは一生消えない彼女の罪の刻印。

双子ちゃんがグスタフにめっちゃ懐いていたのが癒やしだった……せめて君達の心の中に彼が良き兄だったと良いこと楽しかったことを覚えていてあげてくれ……とぼんやり思う。

アンナがマジでクソではあるものの、デンマーク?ノルウェーの森や湖は美しく、インテリアは北欧スタイルのセンスの良さ、美しい自然と共に目の保養になりました。