ハリ

海辺の家のハリのネタバレレビュー・内容・結末

海辺の家(2001年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

癌で余命宣告されたジョージと、離婚した妻に引き取られ心を閉ざしてしまったサムと海辺に家を建てる物語。

この物語は人生を家に例えている。どこに建つのか、どのような存在なのか、家という物に自分自身を投影させて存在感を示している。

ジョージにとって今ある家とは人生の汚点。暴力をふるう父に怯え辛い思い出を纏った家。離れ離れになった息子サムも新しい父親と馴染めず非行を繰り返す日々。サムの家も裕福ではあるが居場所が無く家族との思い出を育む家では無い。余命宣告を受けてから半ば自分勝手ではあるが、息子との思い出、家族の絆を取り戻し自分自身の人生となるような家を建てる決意をする。最初は抵抗していたサムも徐々に心を開いて家作りを一緒に手伝うようになる。

とにかく映像が美しく、聞こえてくる波の音も心地よいBGMとなっている。サムは繊細で脆く、自分の本心とは逆のことをしていないと精神が保てなかったのだろう。父親と一緒に止まっていた時間が動き出すとどんどんサムの内面にある優しさが滲み出てきて感動を覚えた。クリスマスの為に飾り付ける電飾を、倒れて病室から動けなくなった父親に見せる為に取り付け、病室で一緒に眺めるシーンはこの物語の中で最も親子の心が通いあったシーンだろう。

一時は非行に走ったが繊細で優しいサムと、少しがさつだが本当に家族を愛しているジョージ。この映画は安易に心の通わせを説明していない。感傷ポイントなどは徹底的に外して、情景と表情や態度でそれを魅せる上手さが随所に感じられた。

会話が少なくとも、説明が無くとも共に作り上げた家はお互いの人生になったことだろう。完成した家はジョージの父親が昔交通事故で怪我をさせてしまった女性に譲られる。完成を待たず死んでしまったジョージの本当の気持ちを汲み、そしてそれを受け継いだサムの判断である。ラストシーンでは美しい風景へと徐々にフォーカスを移すことによってとてつもない余韻を残して貰った。

作り上げた家にサムが住んでこれからを過ごす終わり方や、皆で作って大団円という終わり方も出来たであろう。だがそれをせずにジョージとサムが本当に通じ合わないと辻褄が合わない終わり方で、このストーリーの中では最高の答えであろうラストシーンだと思った。
個人的評価:名作
ハリ

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