みかんぼうや

海辺の家のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

海辺の家(2001年製作の映画)
3.3
これぞ90年代~2000年代前半のベッタベタな“アメリカの家族愛ヒューマンドラマ”。家族の絆を深めるハートフルなストーリー。海辺に家を建てる話なので、海辺の景色や沈む夕日など美しい映像も満載の感動ストーリーで号泣必至・・・なはずなのに、なんでしょう、この感動しきれない、そして途中に出てくる水を差しまくるシーンによるとんでもない違和感(笑)。

物語の設定は、仕事をクビになり、しかも余命3か月の宣告を受けた建築家の男が、人生最後の思い出として、非行少年となってしまった前妻との息子と、夏休みの間に海辺に家を建てるというもの。

家を建てる過程を通じて、最初は凄まじく反抗的だった息子、さらには前妻との関係が修復され、家族一致団結で最後の大仕事に取り組むという、もはや“お涙頂戴が確約された”設定とプロット。

しかし、あまり感動できず。その理由の1つは、あまりにも他作品で見慣れた家族物の感動ストーリーの教科書展開で、全体的に話が小綺麗にまとまりすぎていたこと。そして、時代を感じさせる劇伴と音楽の使い方が、どうも古臭く感じてしまったこと。「ギルバート・グレイプ」のように時代を感じさせる音楽がかえってノスタルジックで味になることもありますが、本作は音作りの問題なのか、どうも古臭い印象が強かったです。

しかし、そんなベタな展開や音楽を一蹴するほど、断トツで違和感を覚えたのは、主人公の隣人の一見まともそうな母娘が、このハートフルな感動物語にそぐわない性の乱れっぷりを披露すること。話の本筋と全く関係ない流れで、母親が普通ならあり得ない男とセフレ関係になり、その娘は娘で、まさかの相手にキスで襲いかかる・・・(ネタバレなので一応控えます)。これが物語の根幹にかかわる話なら理解できるのですが、本筋と全く関係なし。「このシーン、必要だった!?」という疑問が最後まで残り、感動しようという心構えも吹っ飛びました。ちなみに、主人公の前妻の行動も、一般的に見ると決して関心できるものではなく、この作品の女性の描かれ方が、作品の趣旨から考えると全体的にかなりおかしいです(笑)。

しかも、その要素がまあまあしつこく後半に引っ張られるのですよね。これ、本当に何だったのでしょう?ただの感動ストーリーだと、他の作品と差別化しづらいから、話題性作りのために強引に入れたのかな?製作陣、誰も疑問を持たなかったのでしょうか?

この違和感がなければ、点数的にも★3.7点くらいの普通に面白いヒューマンドラマだになるはずでしたが、結果的に一番心に残ったシーンが、この隣人母親であまりにも引っ張られてしまい、点数も低めにしました。

ラストの締め方は、「そこの伏線回収に繋げるんだ」という意外性があって良かっただけに(これも、思いつき感は強い内容でしたが)、色々と惜しい要素が詰まった作品でした。
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