いずみたつや

プライス -戦慄の報酬-のいずみたつやのレビュー・感想・評価

プライス -戦慄の報酬-(2019年製作の映画)
3.5
奇人にして天才のイライジャ・ウッドが出ていることしか知らずに観たので、ジャンルもあらすじも何も分からず、「一体何を観せられているんだ…」という困惑込みで楽しめました。

「未体験ゾーン」はこういう貴重な体験ができるところが大好きです!

冒頭からいきなり、シェイクスピアにビヨンセの言葉を並べて提示する謎の深さ。

奇妙な(いつもの)雰囲気を醸すイライジャが、絶縁状態にある父と再会を果たすため、人里離れた豪邸を訪ねるところから映画は始まるのですが、ここから予想外の展開にどんどんかき回されていきます。

少々投げやりな部分もありますが、オフビートな笑いとバイオレンスでなかなか楽しい作品です。

何より、監督が父の遺体と過ごした7日間の体験が基になっているとのことで、単に荒唐無稽な映画ではなく、父に対する愛情や怒りや認められたいという願望がにじむ、非常に私的な話なのがおもしろかったです。

これが監督デビュー作ということで、自分という人間を構成するあらゆる要素を注ぎ込んだ感じは嫌いになれません。

劇中でAphex Twinの曲が使われており、原題も同名曲「Come To Daddy」から引用されている点もこの作品を「自分の内面」で形にしたいという強い思いの表れではないでしょうか。