まっつん

マリグナント 狂暴な悪夢のまっつんのレビュー・感想・評価

マリグナント 狂暴な悪夢(2021年製作の映画)
4.5
ジェームズ・ワン限界突破!!

出血大サービスで観た後には思わず笑顔が溢れる素晴らしい作品でした。

個人的に最近のホラー映画に感じる部分として「もう少し普通にやれば?」ということがありまして。例えば、A24やA24ワナビーが作るアートハウスっぽくてハードルの高いホラー映画が一方にはあって。もう一方には、アストロン6などの突き抜けてバカバカしいホラー映画がある。どちらも方向性は真逆なんだけれども、本質的にやってることはそんなに変わらないなと思うのです。そういった中で、「もう少し普通で、王道のホラー映画が観たいな…」と思っていたときにワンさんですよ。「マリグナント」は見事に「王道ホラーの強さ」を見せつける傑作でありながら、最終的には「誰も観たことがない映画」へとしっかり突き抜けている!

ワンさんの発言などを聞けば分かる通り、本作は過去のホラーの名作群を彷彿とさせる作品となっています。デ・パルマ、アルジェント、バーヴァ、クローネンバーグ、その他80年代ホラー多数。まず、この引用元がもう王道で「間違いない」。少しホラー映画詳しい人なら誰しもが「知ってる知ってる!」となるグッドなチョイスなわけです。そういった要素が2時間弱の中に文字通り「ごった煮状態」で投入されている。で、ここが素晴らしいところなんですが、ワンさんの血肉となっているであろう諸々の要素が「俺はこう言うのが好きなんだよね!」というフェティッシュに拘りすぎることなく入れ込まれているのが凄くいいんですよね。これだけ王道な引用を、それこそフェティッシュな拘りだけで用いてしまうと、単にホラーファンへの忖度やサービスだけで終わってしまう。そうでは無くて、ありとあらゆるホラーのサブジャンルが混在しているという作りが物語を引っ張って行ってるんですよね。だから普段ホラー映画とか観ない人でも無類に楽しめる「超一級品のエンターテイメント」になっているという、この王道の強さですよ。本当に信頼できる人間だよワンさんは。

そして、終盤の驚きのテンションの高さ…これには呆気に取られましたよ。ワンさん、やりたい放題か!って感じで正しく大暴れ。「あるキャラクターがヤケクソ気味に椅子をぶん投げる爆笑シーン」もあったりして、とにかくカタルシスの連発です。

エンターテイメントという点では、いつもに増して「勿体ぶらずに画で見せる」ということを徹底しているのもポイントが高いです。ジャンルを横断しながらも、その時々で起こっていることをちゃんと画で見せてくれる。序盤からマディソンさんの心象世界をばっちり画で見せる。そして後半以降の驚きの展開へ….といった一連の流れが誤読の余地が無いほどにハッキリと画で説明されていく。故に叙述上のフェアネスは保たれたままに、超絶展開へとなだれ込んでいく匠の技よ。これは、相当器用じゃないと出来ないですよ。そして、やはり本作は「ジャンルを横断しつつ物語をしっかり見せる」という作品なので、「死霊館」シリーズなどに比べてジャンプスケアは控えめですね。ジャンプスケアの豪快さに気を取られることがないような配慮もしてあるわけです。

とにかく誰が観ても超面白くて、超びっくりするエンターテイメントになっています!おすすめ!