ひでやん

ミナリのひでやんのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
3.6
じわじわとやってくる余韻。

農業で成功することを夢見てアメリカの田舎町にやって来た韓国系移民家族の物語で、序盤から『北の国から』に似た雰囲気。夢見る父と現実を見る母が衝突し、父の身勝手さだけが目立つ。家族一丸となって農業に励むアメリカンドリームと思いきや、独りよがりなダメオトンドリーム。それに振り回される家族が気の毒に思えた。

育ってきた時代が違うから好き嫌いはイナメナイ。料理だめだったりセリが好きだったりするのね…そんなおばあちゃんのキャラが最高。孫へ、愛を込めて花札を。祖母へ、悪を込めておしっこを。得体の知れない漢方薬を飲ませる祖母を嫌いながらも、眠れぬ夜は祖母と寝る孫。そんな2人の掛け合いが面白い。祖母の病は、孫の病気を吸い取って自分が悪くなったような病だった。終盤では祖母を家に連れ戻し、孫たちが祖母を救う。

蛇に石を投げる孫に「見えないより見えた方がいい。隠れてる方が危険で怖いんだよ」と言った祖母の言葉。その「隠れてる」怖さは、農業に向かない土地の水脈だったり、突然やってくる病だったりで、希望と絶望を繰り返す家族。淡々と描く日常の中に、人種、宗教、世代、男女、環境などの違いを巧く取り入れたなと思う。「A24」とブラッド・ピット率いる「PLAN B」のタッグは凄いね。

2度目の旬が最も美味しいと言うセリ。それは、子供のために頑張る「親」であり、親から受け継がれる「子供」であり、この地に力強く生きる「家族」でもあり、タイトルに込められた意味が深い。最後に映し出される家族の雑魚寝が、災い転じて福となすに思えて良かった。
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