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ラスト・ショーのKSatのネタバレレビュー・内容・結末

ラスト・ショー(1971年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

例えば、「スタンド・バイ・ミー」に描かれるノスタルジーに物足りなさを感じた人は、ぜひ本作を観るべきだろう。

50年代テキサスの何もないド田舎の町で唯一の小さな映画館、閉館前の最終上映。これをあえて直接描かず、その「映画」の周囲がどうなのかを見つめているわけだが、意外と笑えてスケベな話の数々が続くため、はじめは、理屈抜きに楽しい。

主人公を演じるティモシー・ボトムズの醸し出す童貞臭さ、後に「タクシードライバー」でトラビスが執着することになるシビル・シェパードの可愛らしさ、まさか後にオスカーを獲るとは微塵も思えないチャラチャラしていて憎めないジェフ・ブリッジス、美人じゃないけどともすれば「卒業」のミセス・ロビンソンより鬱屈していて魅力的な、クロリス・リーチマン…。

主要役者陣の本当に現地人なんじゃないかって錯覚するほどの自然な魅力も、凄く愛おしい。

だが、その先にある、おぞましいまでの苦さ…。静かではあるが、さながら地獄ではないか?アメリカン・ニューシネマの数々の名画の中でも、一際陰鬱な終わり方だろう。

いやはや、ボグダノヴィチは恐ろしい。この2年後に撮る「ペーパー・ムーン」も素晴らしい。写真のような画と映画らしいリズムを楽しむなら後者、半端じゃない渋味と物語の巧さなら本作を勧めたい。
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