jonajona

パーム・スプリングスのjonajonaのネタバレレビュー・内容・結末

パーム・スプリングス(2020年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

たのしい!!しかし…!
彼女と鑑賞。僕はおおむね満足だったがモヤモヤもあり、彼女も浮かない顔をしていたので感想大会に。その結果まとめたモヤモヤはこんなかんじ。

かなり大きなモヤモヤポイントは、
要は『男主人公ナイルズにもっと失敗してほしかった』のにそれが無い事からきてる、との結論になった。ドラマが良くも悪くも淡白になってる。

飽きるほどループに慣れてる男と、ビギナー女のバディというのは斬新でとても良かったが、
男の方はおそらく何百倍もこの一日を『独りで』経験してきてるのにいざ彼女がループに巻き込まれてから、さほど自身の価値観と常人(つまり女主人公サラ)の価値観とのギャップに悩んだり葛藤する場面がない。これに僕らはもやもやしてたのだと気付いた。
彼らは『何千ループの男』と『何十回ループの女』のここにも全く違うドラマが生み出せる関係性なのに、あくまでループ世界に対する『ループする2人』に過ぎない括りで描かれてしまってる。

独りが長過ぎると『どうせ明日にはリセットされるから』という発想が呼吸レベルにまでなってると思うし、それ故に一緒にいる彼女を好きになる=継続性への傾倒は彼の常態化したループ感覚を壊す脅威にもなるはずなのだ。そこに対して彼が戸惑い受け入れられない様がSF的に描かれると面白かったと思う。最終的に、そういうお話にはなってるのだが、中盤の2人がセックスに至るまで〜ラストまでの間にもっとそこの葛藤をメインでお話を膨らましてくれるのを期待してしまった。

それに対して実際は、中盤にはいい感じになったナイルズはこの恋もどうせ忘れいくものだと若干尻込み(継続性を拒否)するものの、彼女とセックスしてすぐその後は一貫して継続性=彼女との恒久的な愛を求めるキャラへと変わってしまう。これが勿体ない、というね。
求めるも不安になる、自分の常識と彼女の常識のギャップにSF的ユーモアを込めつつ試練を設定する事は十分可能だったと思うのだが…。なぜ後半ここまでシンプルな話で、なおかつサラを自己都合主義のキャラ像に変えていったのかも意図が掴みかねる。
最後まで爽やかでもちろん楽しく観れた良作であることは間違いないが、期待してたよりはツッコミどころも沢山感じる映画だった。
個人的にはループの中にいてもいいじゃんって結論に至ってくれてもよかったのにな〜と思っちゃった。

ほんとに考えるほどサラって子は、妹に全部打ち明けるのがラストにある方がいいと思うんだけどな…
彼女のキャラ造形が納得できなすぎた。
言わぬが花、みたいに終わったけどいやそんなクソ野郎とは別れた方がいいと言わんとさ…妹好きなら尚更さ💦
あと!妹旦那と不倫してたのか!一夜だけの過ちだったのか!だとしたらどのように!そのへんもサラのキャラを知る上でかなり肝なのにぼかされてるのもホントあれれ?てかんじ。

しかしこの2人のキャラのドライさと投げやりさはループものの中でも大きな魅力で、『恋はデジャブ』のヤケクソ描写が大好きな自分には、やはり前半部は破格の楽しさでもあり、『2人で見た、とされる』首長竜と『成功した、とされる』ループヤギのエピソードで起きる二者のやりとりで認識の断絶、錯覚を巧みに描いてるやり口は素晴らしいとも思う。
特に首長竜のくだりのさりげなさは見事で、ここの会話劇によって全体像が『結婚に至る男女の寓話』とも取れる普遍性を垣間見せてる。

なによりこのバカさがいいじゃないの
不真面目をやるなら最後まで突き抜けて欲しかったというのが総括かな…
そういえば、バカンス感が案外薄いのもいただけない。(2人で1日で行ける距離まで行ってみるとかそういう遊びはしないのだろうか)

【愛すべき脇役映画】
・JKシモンズ演じるロイの不憫さとたまに殺しにくる狂気性がいい。そら殺しにきますわ、と納得できる。彼がいる事でループものとしての幅を生んでる。ゲームキャラみたいでいい。

・私があんたを振るの、なんであんたが振ってんのよぉと泣き出すナイルズのヤリマン彼女。序盤からおバカで本能に従ってる感じがバカすぎて気持ちいい。
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