けんざ

ナイトメア・アリーのけんざのネタバレレビュー・内容・結末

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

メンタリストを騙るペテン師が破滅へと突き進む様を描く。

デルトロの持ち味であるファンタジーの拡張要素は一切なく、すべて現実に起きたことで完結する物語。そこを期待して観に行った自分としては少し残念だったけど、それでもダークなタッチで描写されるストーリーはしなやかで、2時間半飽きさせないパワーを持っていたと思う。

リリス博士が劇中で突き放したように、スタンの人生はミステリアスでも何でもなく、正体はただの小物で何かに象徴される存在にすぎないと屈辱的な分析を受けている。実際、母親を死産に追いやったホルマリン漬けの胎児はスタンそのものだ。叩き上げで生き抜く術を身に付け、自分の意思で人生を切り開いたつもりが、すべては上位存在(劇場の観客含め)の見せ物でしかなかった。紛い物の手に残されたのは積み重ねてきた業だけ。

スタンの辿る運命もストーリーのオチも結構序盤で予測できてしまう皮肉な話だが、それこそが製作者の意図なのかもしれない。人生は予測不能で味わい深いものではなく、一つの類型として定義付けられてしまう矮小なものだ。
けんざ

けんざ