さいらー

マーベルズのさいらーのレビュー・感想・評価

マーベルズ(2023年製作の映画)
2.5
この規模の作品で、ここまで支離滅裂で映画として成立していないものを観るのは久しぶりでした。

本来必要だったシーンがカットされ、余分な脂肪シーンが残ったせいで、まるでシーンごとにぶつ切れな印象さえ受けるレベルで物語として成立していない。



先に、良いところの話をしよう。

カマラ・カーンが今回のMVPだろう。スクリーンで最も目を惹き、「見て見て!あれ私の推しなの!!」をやってる彼女の反応は見ていて面白い。ドラマ版より好感度は上がった。

そんなカマラと揃ってキャロルとモニカの3人が戯れているシーンは本作唯一の癒しと言える。


さて、残念ながらここから先はたぶん厳しい意見になる。

本作が抱える映画として成立していないレベルの支離滅裂さ。
それがわかりやすく表れているシークエンスがある。
パク・ソジュンの惑星のシークエンスはまるっきりお笑い種で、自分達の星が戦場になるというのに一切の関心が無いようにしか見えない観衆とその星の長であるパク・ソジュン。
その星自体が、「キャロルが歌って踊ったら面白いし絵になるんじゃね!?」という製作陣の思いついた一発ネタがやりたいが為の鳥肌レベルの寒い設定で、脈絡のないミュージカルシーン以外には何も無い虚無シークエンスである。

その流れで気付いたらその星で最終決戦っぽい雰囲気で始まった戦闘も、ほとんど敵艦の上でマーベルズとラスボスの計4人が戦ってるだけの面白みのないシーンで、星の人々の戦闘シーンは背景レベルでほぼ無し。
極め付けは、ものの数分でマーベルズはその星から逃げて、別の場所でなんか揉め始める始末…笑
「いやいや、あの星どうすんの!?w」と気を取られたらもう諦めるしかない。何故なら最後までその星の話は一切出てこない。

あの星の人々がどうなったのか?そもそも彼らは何をモチベーションに戦ってるのか?
…忘れようそんな細かい事は。
そんな理性的な話をする場では無いし、このシークエンスの話は全て忘れてしまっても何ら問題が無いので、いっそ記憶から消してしまおう。

さて、キャラクターに理性的な思考を求められないのだとしたら、SF的な話はどうだろうか。
どれだけ大ボラを吹いていても、もっともらしい説明をされたら受け入れてしまうのが優れたSFだと思っているが、本作のそれは全く納得できない。

戦う理由になっているはずの二つのバングル。そもそもそれがなんなのか、どんなパワーを持っていて、何故こんな事になっているのか?…納得できる説明は得られない。
最後の最後、宇宙に空いた穴を塞ぎたいという事態の解決に至る道も、やはり何を言っているのかわからない。
SF的な説明は基本的にモニカが何度か説明台詞を読んでくれるのだが、僕ら観客は「つまりなんだって?」となるし、キャロルもカマラも「つまりなんだって?」となる。…誰もわからないんだから、ここも諦めよう。
そういうものなのだ。


さて、いよいよ何が言いたいのか何もわからなくなってきてしまったので、いっそもうこの映画の事は忘れてしまって良いのかもしれない。
この3人がチームアップした事さえ覚えておけば今後のMCUで特に問題はない気がする。
ポストクレジットシーンだけ気になる人は観ておけばいいんじゃないだろうか。あるいはネタバレを見てしまえばいい。

こんなクオリティで送り出すまでになってしまったMCUに、これからもついて行くという殊勝な心がけの人だけが見れば良い。

…まあ、結局僕はエンドゲームやNWHの興奮が忘れられず、作り続けられる限りは見続けてしまうのだろうが…。