こなつ

情婦のこなつのレビュー・感想・評価

情婦(1957年製作の映画)
4.2
ミステリーの女王アガサ・クリスティの小説「検察側の証人」を巨匠ビリー・ワイルダーが映画化した法廷サスペンス。

大どんでん返しミステリーとして有名。ウィットとユーモアに富んだ展開、誰もが想像もつかない二転三転する物語のトリッキーさは、アガサ・クリスティの原作に魔法を掛けたようなビリー・ワイルダーの手腕が光っている。

金持ちの未亡人を殺した容疑を掛けられたレナード(タイロン・パワー)は、老齢ながらロンドンきっての敏腕弁護士ロバーツ(チャールズ・ロートン)に弁護を依頼。状況はレナードに不利であったが、レナードは無実を主張。裁判が始まり、検察側の証人としてレナードの妻クリスチーネ(マレーネ・ディートリッヒ)が出廷。そこで彼女は思いもよらない証言を口にする。

退院したばかりの弁護士ロバーツに口うるさく付きまとう看護婦ミス・プリムソル。2人の掛け合いが面白いのだが、ロバーツを演じるチャールズ・ロートンとミス・プリムソルを演じたエルザ・ランチェスターは、実生活では本物の夫婦だった。家での2人の仲睦まじい様子が垣間見れるようなウィットに富んだ会話劇に笑ってしまう。

マレーネ・デートリッヒの妖麗な美しさ、その演技に圧倒される。60年以上も前に公開されたモノクロ作品なのに、あそこまで艶めかしく、色っぽさが溢れてドキドキさせられる。そして怒涛のラストには誰もが息を呑むだろう。さすがアガサクリスティだった。本当に面白かった。

「観ていない人にはこの結末は話さないで下さい」というように、是非鑑賞してこの傑作の結末を楽しんで欲しい。タイトル「情婦」とジャケ写のイメージが良い意味で覆される作品だった。
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