緑

ファーザーの緑のネタバレレビュー・内容・結末

ファーザー(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

認知症の混乱疑似体験作品。

初回、中盤過ぎから寝落ちしてしまい、
2回目……も眠くなったが根性で最後まで鑑賞。
睡魔に打ち勝った甲斐はあった。
叩かれて怯えたり、
ママを求めて泣いたりするアンソニーが
かわいそかわいい!

アンソニーは楽しそうに振る舞っていようとも
常にどこか物悲しく、
アンの悲しみや戸惑いも控えめ且つ確実な表現で、
しみじみといい芝居だった。

2回目前半、なんでこんなに眠くなるのか
考えながら観ていたのだが、
恐らくカメラワークのせいだと思う。
アップは少々あるが施設が出てくるまで
ロングショットはほぼない。
カメラの角度は人物に平行で、
斜め上下からの画もない。
スクリーンにおける人物が占める割合が数パターン。
終盤近くまでは少人数密室劇なのもあり画に変化が乏しく、
意図的なのはわかっても単調に感じてしまい
睡魔が襲ってきたのではないかと。

アンソニーの病状そのものもつらいが、
それにも増して他の人たちのアンソニーを見る目がつらい!
娘、娘婿、介護士、医者、
それぞれが彼を見るときに
それぞれの思いが眼差しに乗る訳で、
全員違う思いを抱いているのに
全部がいたたまれなかった。

終わってみれば、
男性の「順調ですか?」はヒントだった。
不自然だとは思っても施設職員だとは思い至らなかった。

介護士の「覚えてるでしょ」はひどい。
観ているこっちが傷ついたよ。

アンはできる限りのことをしていたと思う。
気になったのは、アンソニーの下の娘溺愛の言葉は
患ってから出てくるようになったものなのか、
それとも以前からよく言っていたことなのか。
後者ならあまりいい父親ではなかっただろうに、
ほんとによくやった。
旦那と一触即発のときに
アンの肩をポンポンしたことが象徴するような
そういうタイプの父親であってほしい。

アンソニーが叩かれていたシーンは
施設での虐待ではなく、
老人性の妄想障害ではないかなと思っている。
緑