ペイン

ファーザーのペインのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.5
ポスターで受けた印象の「感動作」でもなく、かといって巷でよく評される「ホラー的」とすらもあまり思わなかった。たしかにポランスキーの神経症スリラー『反撥』っぽさはあるにはありますが。

本当にシンプルに90分の体感型認知症VR映画という感じで、こりゃシネコンであまり上映されないのも頷ける。

これ程までに“認知症患者側の見える世界”を丁寧にすくいとり、かつ淡々と視覚化、映像化した作品はたしかにあまりないかもしれない(※勿論私は当の認知症患者ではないので、真には理解出来てはいませんが)。

如何にも戯曲の映画化!という感じでもあるが、その反面、限定的な閉鎖空間でもってそれを最大限に映画的にフル活用していく用意周到な語り口は見事という他ない。

イギリスが舞台になったというのもひとえに、監督が答えている通り、“アンソニー・ホプキンスが主演してくれるから”であり、もう完全にアンソニーによるアンソニーのためのアンソニー映画であり、アンソニーの独壇場といっても過言ではない(※勿論、オリヴィア・コールマンやその他役者陣も見事だが)。

映画としての作りも非常によく出来てはいるが、手堅すぎてもう少し脱線というか一線を超えてしまう映画的瞬間のようなものを見たかったかもしれない。絶望感という意味でもハネケの『愛、アムール』には劣る。イモージェン・プーツはいつ観ても可愛いです。大好きです。
ペイン

ペイン