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ファーザーのjun2kmのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.6
自分でも予想してなかった。泣くつもりなんて微塵もなかったんだ。ただ97分間、アンソニー・ホプキンスさんのアカデミー賞演技を楽しむだけのつもりだったのに。ラスト5分、身体の筋力が全て失われて、心の深淵部から彼の演技に魅せられた。いや、何て言ったらいいんやろ。アンソニー・ホプキンスさんの肉体をつくっている霊的な何かが私のからだに憑依した感じやった。彼が演じた主人公は実在していて、そしてその主人公は私自身でもある、そんな感じだったんだ。リインカネーションてこんなものなのかもしれない。映画の主人公と自分がそこまで一体化したことなんてないよ。だから、主人公が泣いたのは自分が泣いたのと同じなんだ。いやもう、アンソニー・ホプキンスさん、恐るべし!
映画で描かれていたのは認知症の話なのでしょう。でも、俺の心は正常なんやろうか。
だってさぁ、、、
仕事に追われまくっているからかも知れんけど、
俺、自分が誰かわからん時がある。
何をしているのかわからん時がある。
どこにいるのかわからん時がある。
横たわって休んでいいのかわからん時がある。
何が本当で、何が本当でないのかわからん時がある。
周りの人達がなぜそこにいるのかわからん時がある。
そして。そして、、、。
あなたには、私の前から消えてしまわないで欲しい。
映画では主人公が泣きじゃくりながら言うんだ。
「母に会いたい」って。母なら自分が何者なのか教えてくれるだろう⁈

映画のラスト5分からエンドクレジットが終わるまで、眼から熱いものがあふれ続けた。
終始、緊張感に包み込まれて、広い劇場にたった一人で腰かけて、舞台の上を息を殺して凝視する。そんな感じの映画だった。とにかく、この作品を見たってことをあなたに伝えたい!

映画館で鑑賞しました。映画を見るなら、やっぱり映画館だね!平時の暮らしに戻ったら一緒に行きましょう!カカオの効いたアイスクリームも奢ってあげる。
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