らっく

ファーザーのらっくのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.0
認知症を描いた作品というと、介護する側の大変さと愛情の間で揺れる想いを描いたものが多い。
一生懸命お世話してるのに財布を盗まれたと騒がれる苦悩。今はない場所や人を探して毎日夜中に家をでていく親を探す家族。そんな作品を見て認知症の家族と暮らすのは大変だと思っていた。

しかし、この作品は、認知症の父親が認知する世界をそのまま描いて話がすすんでいく。
正気のときに認知したことなのか、幻想なのか。見ているこちらもわからない。
一体彼らはどこにいるのか、この人物は本当は存在しているのか、時系列は?
混乱する。
わけ分からなくなる。
……これが認知症なのか。

認知症の本人がこんなに苦しいことを体感させてくれた作品だった。

身体が弱ることは目に見えるので、優しくなれる。認知機能の衰えは理解しがたく受け入れがたい。
親が親でなくなっていくことを見ていることが辛く思えて気持ちが萎えている今、この作品に出会えてよかった。
らっく

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