SAtone52484

ファーザーのSAtone52484のレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.4
アンソニー・ホプキンスの迫真の演技!!!そして巧妙に組み立てられた脚本。最初から最後まで、(息をするのが憚られるほど)じっーーと鑑賞しました。



(個人的な話になりますが…) 私が中学生〜高校生の頃、祖母と母が、祖父の介護をする姿をみていました。
脳梗塞の麻痺から始まり、徐々に認知症が始まると、家族皆でさまざまなことに直面しました。
この作品の中で描かれているのは、まさにその時に目にした祖父の姿であり、(日々介護をしていた)祖母・母が当惑する姿。
見ていて、いろんなことが思い出され、苦しくもなり、でも祖父が直面してしていた自我・自認の葛藤のようなものも感じられ、本当に見入ってしまいました。

「わからなくなる」という恐怖。
こんな風になりたくない、と思うんでしょうが、そればかりは自分でコントロールする術もなく…「老い」というものを、老いる方の視点で描くことで、新たな視界が開けたような感覚になりました。

介護をしていた祖母・母のことを「大変だなぁ」と思って当時は見ていましたが、自分が自分でなくなっていった祖父自身も、本当に苦しかったんだろう…と、今になって思います。
認知症が進むに連れ、(背が高く、紳士的だった)以前の祖父の姿が思い出せなくなり、真剣に向き合えなくなってしまったことを思い出し、当時、このような視点で描かれた何かがあれば、違った向き合い方ができたかなぁ、と考えてしまいました。

イモージェン・プーツが演じたローラのように、飄々と明るく、媚びず、悪びれず、接することができたなら… 認知症の本人にとっても、当事者にとっても、まさに「夢」の様な存在ですね。
認知症だけでなく、さまざまなレベルの介護が当たり前になるであろう超高齢化社会・日本。
だからこそ、「精神的な苦痛」や「家族の負担」としてではなく、もう少し軽やかに、共に生きていけるような、そんなマインドセットが社会に浸透することを願うばかりです。

私の祖母・母は、真剣に認知症の祖父に向き合い、本当に気力・体力共に消耗させていきました。。。
まさに作中のオリビア・コールマンの姿!!!(彼女がこういう役もできることに驚きました。もっとパンチが効いてる印象。笑)

この作品、家族で鑑賞して、話し合うのにおすすめです。
もちろん、当事者となれば、「そんな悠長なこと…」ってなるんでしょうが、それでも、色んな視座を持つことを、必ず助けてくれるそんな作品だと思います。
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