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アシスタントのBATIのレビュー・感想・評価

アシスタント(2019年製作の映画)
4.2
映画業界内の理不尽さとセクシズムとパワーハラスメントに苛まれる入社2ヶ月のジェーン。告発するも「5年後君はどうしたい?」の問答。発言する無意味さ、今が未来に繋がると諭す環境は完全に男性優位。上げる声がミュートさせられる世界にすべての女は生きる。観ていてすごく日本の事務職の苛まれ方だなぁと思いつつ、各国このようなことが罷り通っている2020年代に戦慄してしまう。居心地の悪い映画に間違いはないが細部にいたってよくできていて、このバトルが「ある1日」でしかないことも、観る側の臓腑を抉ってくる。

業界内の不健全さってどこにでもあるけど、女性に対する扱い、そしてそれを見ている男性の同僚の薄情さをとてまリアルに描いた嫌な映画でよかった。全体に「こういうものだから」が蔓延していて、告発するシーンの無力さが決定的なのだけど、給湯室で愚痴る女性スタッフ二人が使ったマグを何も言わずにそこで「やらなくていい」洗い物をしているジェーンに置いて立ち去るシーンもなかなかに不快だった。この最悪だけど我慢しないと先に進めないだけじゃなくてそれでも将来は約束はされていないところ、結局は男性優位社会にあること、この不均衡さが諸悪の根源なんだよな。私が知人の業界で働く女性の「なんで私がこんなことやらなきゃいけないの⁈」をいくつも聞いたことあるけど、それを彷彿とさせた。エンドロールにてリサーチ行った映画だといあことが分かるのだけど、なるほどそれはリアルだと思える作品で、この無力さも本当にそうだった。また音響凝っていて、用事をジェーンに押し付ける男性の同僚が投げつける紙屑の衝突音、エレベーターの階通過音(これが本当にイヤだった)のマスキングが顕著だった。そことかこの作品全体の冷淡さはフィンチャーに通じるところがある。キティ・グリーン監督、是非次も期待したい。
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