半兵衛

トルコ行進曲 夢の城の半兵衛のレビュー・感想・評価

トルコ行進曲 夢の城(1983年製作の映画)
3.0
瀬川昌治監督は70年代にはポルノに片足を突っ込んだようなエロ混じりな喜劇映画を多数手掛けてきたが、いざ本家ロマンポルノを監督してみると何処か違和感があることを確認。でもドラマ自体が暗い過去を背負ったトルコ…風俗嬢の奈美悦子と家を飛び出して姉のところに押し寄せた山口千枝の姉妹による複雑な関係を真面目に描いたドラマなので、太地喜和子をはじめとする瀬川監督が得意とするバイタリティ溢れる女性演出を生かせず辛気くさくなってドラマが停滞しているのが大きいのかも、一方で脇役のはずのどんな状況でも明るく前向きに生きる風俗嬢朝比奈純子は生き生きと魅力的に描かれていてこっちをメインにしたらもっと面白くなっていたのにと残念な気持ちに。

ただ終盤の登場人物たちが次々と呆気なく死んでいくも誰もそれに気にせずその骸の上で生を謳歌する残酷なまでに明るい展開は個人的には好み、奈美悦子のフラグが立ちまくってのあの結末は笑いそうになるけれどそんなもの他の人は気にせず生きるんだよと言う優しいけれどあまりにも非情なラストは人生というものを突きつけられて胸をうたれる。でも妹の山口千枝のその後を一切触れないってどうなんだ。

小林稔侍の悲哀ある中年男の演技が良かった、あの最後の笑みはちょっと泣きそうになる。それと森川正太がロマンポルノに出るのが珍しいけれど80年代から映画仲間である近藤照男のプロダクションを中心にテレビで活動してきた瀬川監督とドラマでの付き合いから出演に至ったのだろうか。
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