Aya

In the Absence(英題)のAyaのレビュー・感想・評価

In the Absence(英題)(2018年製作の映画)
3.2
#twcn

2014年、釜山沖で起きたセウォル号沈没事件の数あるドキュメンタリーの一つ。
一応IMDBでは2020年作品、となってますね。
ドキュメンタリーとしてはあまり面白みはないですが、アカデミー賞にノミネートされたのは大きなこと。

船内の様子を撮った映像も多く、このドキュメンタリーに多く登場している乗客の彼らがもうこの世にいないと思うと・・・。

乗船していた476人のうちなんと312人の死者、行方不明者を出した大変な大惨事。

しかも中身がエグく、船体自身の問題、危機管理の問題、書道救助要請の遅さ、救助活動の規模、有事の際の誘導・避難指示の不足、船員が乗客を避難誘導せず、残して先に避難した問題。

そして、被害者の多くが修学旅行の高校生であった点、などを含め大変な問題をはらんでおり、事故ではなく事件とも取れる。

最初の通報があってから、船自体が完全に沈むまでかかった時間は7時間。
助かった可能性の高い300人近くの人がどうして亡くなるざるを得なかったのか?

しかも、そんな高校生から最後に両親に向けて送られたカト(カカオトーク)やメールの文面が生々しい。

「愛してる」
「会いたい」

家族のインタビューも往々にして元気がない。
怒りを通り越し疲れ果てた様子。
引き上げられたセウォル号に遺族がかけた言葉は

「1人じゃなくてよかったね。友達と一緒でよかったね」

こんな言葉ある?!

この際の抗議活動中、政府側の役割として対応している警察官も涙を流すほど。
そして、事故以後の裁判の長期化、それに絡む多くの事件、自殺を生んだ、今でも終わっていない出来事。

裁判や国会での聴取シーンもあるのですが、もう生き残っても地獄。

船が沈んでいる最中にも緊急通報にかかってくる「助かりますよね?」と祈るように冷静に状況を伝える電話。

後手後手に回る政府、大統領。
どれだけの大事故か理解している態度とは思えない。
当時の大統領、朴槿恵が辞任したとて、帰ってくる人はひとりもいない。

救助隊、という名の遺体発見隊の皆さんは「心をシャットダウンしないと潜れない」と死んだ顔で答える。

何気に4年後に引き上げられたセウォル号から多く回収されたハンドフォン(スマホ)が膨張して膨れ上がり、破裂した状態で見つけられている点初めて知りました。
長く塩水に浸かってると、そうなるんだ・・・。

セウォル号関連作品として有名なのは、何と言ってもその年の秋に公開した「ダイビング・ベル セウォル号の真実」(日本語でも上映会などで見れるはず)。

この映画を上映する、しないを巡って、釜山映画祭と大げんかになり、止める釜山市と強行上映をした釜山映画際。
2014年より釜山市からの助成金が大幅に削減。

今でもそれは続いており、2019年の釜山映画祭でも真実の解明を釜山市に求める署名活動(署名してきました)、黄色リボンのステッカーやキーホルダーにての活動は行われていました。

釜山映画祭はアジア1大きな映画祭で且つ、アジア1のマーケットを誇る映画祭にも関わらず、2014年以降「来年の開催」のアナウンスが行われません。
普通「来年も会いましょう!」って出るのに。

開催年の夏ごろまで「本年開催」の予定も出ません。
でも、それでも映画を公開してよかったと誇れる釜山映画祭。

しかし、政権交代後、現在韓国でも嫌われまくりの文在寅が釜山市が出さない予算を出してるので、正直エンタメ業界から反文在寅の声が上がりづらい、という状況は、あると思います。私見ですが。


youtube
韓国語:英語字幕
第92回アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門ノミネート作品
Aya

Aya