レネリー

アンダードッグ 前編のレネリーのレビュー・感想・評価

アンダードッグ 前編(2020年製作の映画)
4.5
Blu-rayにて鑑賞

寺山修司の「ボクサー」から始まり、岸善幸の「あゝ荒野」、そして本作の監督である武正晴の「百円の恋」などとボクシングを題材にする映画ってなんかこう胸が熱くなるというか、感情を揺さぶられる作品が多い気がする。

チャンピオンの道をあと一歩というところで惜しくも逃してしまったかませ犬崖っぷちボクサーが、期待の若きボクサーとお笑い芸人ボクサーとの宿命的な出会いにより、どん底に落ちた夢見る燃えカスからそれでもボクサーにしがみ付く様子を描いた群像劇。
ボクシングパートのみならず、人物像を浮き彫りにしたドラマパートも濃密なまでに焦点を当てた本作は、風俗業界やドメスティックバイオレンス、虐待、離婚問題、孤児院、障害、報復行為などアングラなテイストも織り交ぜてくるので全編見終わってから中々の満腹感だ。

全てのキャラクターが輝いており、むしろ約4時間では足りないくらいもっと背景が気になる程だ。
まあすっきりとした感じがするので逆にこれのほうが良かったりもするのかも?

ただ、蛇足を感じざるを得ない部分も多々あり、報復行為と虐待に関する内容が余りにもあっさりしすぎている。これはもはや描く必要があったのか…。

とはいえ、武正晴らしい作風とキャスト陣の見事すぎる演技に感無量。
胸を熱くし、涙したい人にお勧めする。
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