JAIHO配信にて。
いま現在、映画業界関連の出自ではないボリウッドの男性俳優の中では一番コンスタントに主演でヒットを飛ばし続けている、ラジオ・ジョッキー出身のアーユシュマーン・クラーナーの2019年のヒット作。
デビュー作の『Vicky Donar/ドナーはビッキー(2012)』(IFFJ2012にて公開)の精子ドナーで稼ぐ遊び人の好青年に戻ったような割と得意な役柄で、ファンとしてはほくほく。
映画デビュー以降割とクセのある役が多く、とにかく英語字幕ではイマイチ要領を得ないことが多いので、日本語字幕付きで飛び付いてみたわけですが、これ、珍しく、詩とウルドゥー語の発音以外、難しいところは特にないスラップスティックでした。
話の運びもラストを除けばデビュー作と割と似ていて、さらに単純になっているのですが、その分間口が広がったのか大ヒットしてますね。彼の作品でここまで単純なのは珍しいと思います。
修士号(多分古典文学)まで持っているけれど職がなく遊んでいる葬儀用品店の長男という役柄で、家の借金もあってやむなく?得た職が女性になりすましてのテレクラの仕事。が、何故か、その美声の虜になった複数の顧客(しかも多くは知人)に迫られることに・・・
この辺、全然納得が行かなかったのですが、お仕事でのトークとわかっていて何故勝手に騙される?
とはいえ、私も役柄ではないスター本人の声とかツィッターでのツイートが好きでそれがヒンディー語のみになってしまった時からヒンディー語学習しようかと思い始めたくらいなので、気持ちはわかる。(でもだからって、結婚できると思うか?)
兎にも角にも、この顛末の説得力は演じるスターの魅力から来ているのは確実。
根は悪くなさそうな主人公は「孤独な人が多いのに驚いた」と結構親切なのだが、その後の展開がグダグダに。
とはいえ、ボリウッド映画の結婚をめぐるラブコメの文法をほぼ忠実に踏襲しているので特に問題もなくラストに向かいます。
宗教や社会階層の乗り越え方も、従来のボリウッドラブコメ的な、愛さえあればなんとかなるわ、だったので見ていて非常に楽でした。(2013年以降のジャンル映画はうっかりすると殺される。)
ラストのソングシーンなんか、結婚式の余興でさぞかし盛んに使われたんだろうなあ。
アーユシュマーンのスターパワーと器用な演技力で全てねじ伏せた感じですが、まあ、ヒットにつながる技能を生かすとこういう展開になるよね。
現代人の孤独に踏み込みそうでいてそうでもないところが良くも悪くもヒットの理由なんだろうな。
答えは見た人が感じればいいのでしょう。
個人的には警官夫婦と女性課長のその後がちょっと知りたくはありました。
2019年以降のインド映画の公開はあまりないのですが、この頃から昔ながらのボリウッドの明るいラブコメのタッチが復活しつつあるようで喜ばしいです。
一時ボリウッド映画、劇場公開作はシリアスの実話物かスポコン、アクションばっかりで新作映画イマイチで困っていましたが、少しましになってきたようです。
(アーユシュマーン原点回帰のヒット作 2021/10/24記)