TAK44マグナム

ヴァスト・オブ・ナイトのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ヴァスト・オブ・ナイト(2019年製作の映画)
3.8
短評です。


Amazonプライムオリジナル作品。
架空のドラマ「パラドックスシアター」の一編という体裁をとっていて、「アウターリミッツ」や「トワイライトゾーン」好きにはたまらないSFスリラー。

電波に流れる謎の音。
密かにおこっている人間消失。
そして空にいる「何か」。
題材そのものに新鮮さはないけれど、レトロな語り口に惹かれる作品です。
もっとも舞台となる60年代なら、この題材もまだまだ新しかったのでしょうか。

始まってすぐは台詞量も多く、それを追っているうちにどんどん作品世界に引きこまれていく感じで、登場人物が整理されてからは2人の主人公をカメラが追い続け、不思議な夜の世界に囚われた感覚を受けました。
いま、普通にこういった作品を撮ったら、たんに古臭いだけに見えてしまうでしょう。
怪異そのものを派手に魅せるわけでもないので、ショボくれたB級映画の烙印を押されてオシマイかもしれません。
でも、本作は本当に不思議で魅力的。
言葉でうまく言い表せないのがもどかしいですが、「これぞSFといった空気」が充満しているのが分かります。

観る世代によって、受け取り方に差異があるやもしれません。
「こうやって電話交換するのか」と興味深かったですけれど、電話交換をよく知らない世代には奇異に映るかも?
個人的には、夏の夜に聴く怪談話のような懐かしい匂いがつまった、そんな観賞となりました。
ちょっと「未知との遭遇」なども思い起こしましたが、スピルバーグが観たら気にいるタイプの作品なんじゃないかな。


ロジカルなラジオDJが、その実はエモーショナルな事件に飢えているのには共感。
知的欲求に抗えないままに迎える末路、その余韻も素晴らしい。
じっくりと作品世界に浸るため、できれば独りで観た方が良いと感じました。

その昔、オーソン・ウェルズが語りを担当して「宇宙戦争」のラジオドラマを流したら、あまりにも真に迫っていたので聴衆が事実だと思い込んでパニックになったという有名な事件があったそうですが、本作もラジオ番組が主たる舞台。
この番組を聴いている作品世界の人々がどんな風な反応をしているのか、それも観たかったですね。
ともかく、SFがお好きならオススメです。


アマゾンプライムビデオにて