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君は永遠にそいつらより若いの8637のレビュー・感想・評価

3.6
感想を書くのが難しい映画だった。僕も堀貝さんのようにとっ散らかった事しか喋れない人間だと思っていて、僕の感想が他人に共感されるのかさえ分からない。
そもそもこの作品がジャンルを纏わない、ただドラマチックな"日常"の映画で、キャンパスライフ未経験のような自分はどこか取り残された。

だけど、生きている人が、取り残されてはいけない。

誰しも、人の優しさに嫉妬する。それは「これだから自分は...」と反対に自分を低めて起こる。しかし誰しもが完璧な人生を過ごせるわけもなく、宥める存在の誰かも、聞き上手を装っていたり、建前を用意している。結局は自分の話を聞いて欲しいだけだったりする。
「"完璧"になる必要はない」と言いながら、相手を思いやり"完璧"を求められる世界。誰かの抱えていた大切な何かに何故気付けなかったんだろうと後から嘆いてもそれは手遅れなのに、その苦しさは少しの間自分を絞めつける。
そんな日常をつらつらと語る。その裏にはまた誰かの"気付かない大切な何か"が存在している。

猪乃木さんのローテンションさに、つい堀貝さんとの関係の脆さを感じてしまう。しかし二人は"大切な何か"を共有できる程思い合っていた。堀貝さんは、自分からは理由を聞かなかった。

境遇を競い合って劣敗とか、そんな事なんて無くていいと思う。
朝起きのままフラットに命を落として、死んでいく事ばかりによくフォーカスされるが、生き延びるという素晴らしさには気付いていない。まだ一度しか出会わなかった人に向けて、どう悼む事が正解なのか。堀貝さんはそれをちゃんと分かっていた。
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