悠

粛清裁判の悠のレビュー・感想・評価

粛清裁判(2018年製作の映画)
3.0
「群衆」シリーズ2作目。
これもスターリン時代に行われた政治犯裁判の映像記録。
2時間。長い。
淡々と『現実』だけが流れていく作品。
故に恐ろしい。

「産業党」と言う組織が五カ年計画を妨害し、
資本主義国からの干渉を促し、
ソビエト連邦政府を混乱及び打倒しようとしてた。
彼らはソビエト連邦民の生活を脅かす存在である。
彼らは各種産業部門の技術者であり、教授であった。
その優秀な頭脳をあろうことか国家転覆に使ったのである。
内実を明らかにし、組織を解散し、その責任者には死を。
世界の新たな規範となる社会主義国家の発展を妨げる者には死を。
2時間にわたって繰り広げられた裁判の様子、死刑を望む民衆のデモ。
判決は自由と公民権を剥奪され財産の没収がされた者、
国家を守るための「社会防衛最高措置」すなわち銃殺刑に処された者。
生活を脅かされた民衆はその判決に歓喜する。

だがしかし全ては虚構であり茶番であった。
――――そもそも「産業党」など存在していない。―――
映像が終わったあとのテロップを見て戦慄を覚えた。
そう、全てはスターリンによる喜劇なのだ。
事件をでっち上げ、民衆を不安にし、煽り、制裁を加える。
そうして民衆の心をコントロールした。
革命は無意味だと。

被告のわざとらしい反省の弁が増えた辺りから
なんか胡散臭いなと思いましたが
11日もかけた裁判が全て作り物とは。
大した役者だよ、皆…
被告役の人達はその後秘密警察に入り色々仕事をしてたようで。
中には「行方不明」の人もいて、そっちのが断然怖いわ!と思いました。
主犯とされた人は銃殺刑を恩赦、のちにスターリン恩賞を得てましたが
10年後とかにやっぱりお前銃殺ねって刑をくらった人もいて
まぁ、人の命の軽い事。

恐ろしいのはこれが今でも起こり得る事。
群衆は流されやすく、真実なんてものには届かない。
それがたとえ恐怖政治ではなくても。
悠