旅するランナー

水を抱く女の旅するランナーのレビュー・感想・評価

水を抱く女(2020年製作の映画)
4.2
【潜水夫の恋】

海なし県で寿司屋を探すバラエティ番組はあるけど、そんな店はモグリだと言い切れません。
ちゃんと歴史があったりするんです。
だから、海なしベルリンでの人魚映画もありだと思います。
まあ、川・湖・池があればイイじゃいないですか。
分断されていた人の流れが、東西統一により再び生まれた、このベルリンという都市自体が一つの水源と言えるのかもしれませんしね。
ちゃんと歴史があったりするんです。

時に華麗に、時に不穏に聴こえる、バッハ「協奏曲BWV.974第2楽章」が流れる中、女パウラ・ベーアと潜水夫フランツ・ロゴフスキの恋が絵のように美しいです。
終盤はホラーチックになるけど、愛する人の命と引き換えに、人間としての生活を捨てるんだと考えれば、切なくも美しく淡い恋物語と見て取れます。
なんせ淡水人魚ですからね。

それと、ビージーズの曲、
Ah ha ha ha staying alive.
最初は唐突で笑っちゃったけど、この曲も水脈のごとく奥深い意味を持ってくるわけです。
やっぱりクリスティアン・ペッツォルトさん、モグリの監督ではありませんね。