ないで

水を抱く女のないでのレビュー・感想・評価

水を抱く女(2020年製作の映画)
4.3
舞台はベルリン。博物館で学芸員をしているウンディーネは、恋人ヨハネスから別れを切り出された直後に、潜水士をしているというクリストフと知り合う。やがてクリストフと深く愛し合うようになった彼女の元に、よりを戻したいと再びヨハネスが現れ、クリストフの身に異変が起きる。

職場でウンディーネが担当しているのはベルリンの都市計画の展示で、どうやら東と西、水辺と陸地といった相反する要素の共存と進歩がテーマだ。その解説に惹かれたクリストフが、ヨハネスを失って茫然自失となっていた彼女に声を掛ける。

ある日ウンディーネは同僚の代わりにフンボルトフォーラムの解説をするよう頼まれる。気が進まないながら準備をする彼女の元にクリストフが訪ねてきて話を聞きたがる。ウンディーネにとって博物館なのに王宮を模して再建されるフンボルトフォーラムは、人間はいつまでも変わらないという考えを象徴する建築プロジェクトであるらしい。そういう説もあるのだ、と締めくくる彼女。クリストフを駅まで送る途中でヨハネスとすれ違った彼女は思わず振り返ってしまう。

現代のウンディーネは、ベルリンという相反する要素を抱え込む歴史を持った土地で、人間との共存の可能性を夢見る学芸員をしていたというファンタジーめいた物語。ベルリンの地勢と歴史に水の精ウンディーネという存在を重ねて描くという着想はすごく面白かったです。ハッピーエンドとは言えないのだろうけど、ウンディーネとクリストフが接近するとカフェの水槽が割れてしまう、そしてカフェから出禁になったのが二人にとって共通の楽しい思い出になっている、っていうところが微笑ましくて好きでした。すかさず保険の有無を心配していたあの店員さん、何者だったんでしょうね。
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