藍紺

ペルシャン・レッスン 戦場の教室の藍紺のレビュー・感想・評価

4.1
ペルシャ人だと嘘をつき処刑を免れたことから、ナチス将校にでっち上げのペルシャ語を教えることになる強制収容所のユダヤ人青年。

全く知らない言葉を作り出すってどうやって?と思うのだけど、ユダヤ人青年が捻りだした方法こそが物語の重要な鍵になっていて見事だった。
収容所の捕虜たちは生きることに必死な中、ナチスの親衛隊たちは食事や音楽を楽しむ、恋をし恋に破れ嫉妬に狂い同僚を密告したりする。民族の違いだけで人生が一変してしまう戦争の理不尽さ。でも戦争が起きなければどちら側の民も普通の暮らしを営んでいたのだよね。
言葉を教えていく中で二人の間に友愛が生まれるのかもなんて甘い考えをバッサリ切り捨ててくれる展開。ナチス将校がユダヤ人青年に一方的に親密さを覚えようがそれは生殺与奪の権利を握った上での関係なわけで、恐怖を振りかざして得た友情なんてまやかしに過ぎない。
ナチス将校が収容所で亡くなった人の名簿に目を通し死者を悼む気持ちがあればこのラストにはなってないのだろなという皮肉。

反戦のメッセージと多くの名もなき犠牲者への弔いの気持ちが伝わる素晴らしいエンディングだった。
藍紺

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