九月

みんなのヴァカンスの九月のレビュー・感想・評価

みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)
4.5
セーヌ川のほとりでたまたま出会い、恋に落ちたばかりの相手を追いかけ、彼女のヴァカンスの旅先へと向かうフェリックス。

親友のために嘘をついて仕事を休み、ついていくシェリフ。その嘘もバレバレなのに咎めてこない上司も、何の迷いもなく休みを取ってついていこうとするシェリフも、そのあっけらかんとした様子に憧れる。懐の深さや、普段からの関係性を慮る。

てっきり女の子が乗ってくると思い込んで車を出したばかりに酷い目に巻き込まれるエドゥアールは、彼らの運転手に過ぎなかったのが、いつの間にかかけがえのない友情が芽生えている。

物語を動かすきっかけになるフェリックスとアルマの言動には度々ギョッとしてしまったけれど、彼らを取り巻く風景や周りの人たちにとても惹かれた。

お気に入りのミニシアターの紹介文に「エリック・ロメールの正統な後継者としてヴァカンス映画を極める奇特な映画監督ギヨーム・ブラックの最新作!」とあったが、この夏に観たロメールの映画とも通ずる好きな要素がたくさん詰まっていた。登場人物の描写がだいぶマイルドというか、周りにもいそうな人や共感できる人しかいなくて、より入り込めた。

言ってしまえばどうでもいい話が繰り広げられているだけなのにたまらなく憧れる、フランス映画のこの魅力。
ふわっと笑えるシーンや、夏って良いなぁとあとからじわじわと思い出すシーンがたくさん。みんなでアイスクリームを食べ歩くところと、早くマウスピースをつけて眠りにつきたいのになかなかお喋りから解放してもらえず、延々と付き合う何とも言えない優しさが溢れているところが特にお気に入り。

恋愛でも性愛でもなく損得勘定もない男女の関係性に憧れたのも束の間。
九月

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