勧善懲悪とは対局に位置するプロット。複雑に感情が絡まり合った人間という生き物の難しさ、シンプルなファンタジーでは表現できない生々しい人の心が此処にある。
白!黒!とはいかない多重・多面的な視点で、大変奥行きを感じる作品でした。
各登場人物に対して共鳴する部分(気持ちに寄り添える部分)と引く部分(断罪したくなる部分)がモザイク模様に施されていて、型にはめられないから心の整理の落とし所がつけれず、ずっと、ずっと胸の奥がざわついて苦しい。
ヒトは皆、自分が正しいと思って生きたいもの。正しいと突っ張ってなきゃ崩れ落ちてしまうから。
吉田編集の真骨頂、タイトル挿入を相変わらず斬新にぶっ刺してきた。本作もエグい角度で入ってくる。衝撃の余りその簡単な2文字が脳内処理できずに空白を生んだ。