回想シーンでご飯3杯いける

青くて痛くて脆いの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
2.6
先日観た「市子」がとても良かったので、同じく杉咲花が主演級で出ている本作を鑑賞。原作の小説を書いているのは「君の膵臓をたべたい」と同じ住野よる(ちなみに男性)らしく、なるほど若者特有の思い込みやすれ違いを取り入れた作風は、確かにどこか共通点がある。

杉咲花が演じる女子大生、秋好は「世界を変える」という大それた目標を掲げ、吉沢亮演じる楓と共に秘密結社サークル「モアイ」を立ち上げる。そこからシーンは数年後に。秋好がいなくなり、同サークルは安っぽい就活サークルに成り下がっている様子が映し出される。いったい何があったのか?

小柄な体をはつらつと動かし、周囲を気にせずに我が道を行く秋好は、まさに杉咲花にぴったりの役どころ。しかし「モアイ」が変わり果てた経緯は、思ったほど明確に描かれず、謎が明らかになるにつれ、ストーリーの浅さや青臭さが気になってしまう。

まあ、タイトルが「青くて痛くて~」なのだから、内容に偽り無しとも言えるのだが、秋好がモットーとしている「なりたい自分になる」も、どこかで聞いたようなフレーズで、大学生を主人公にした映画として、どうにも優等生過ぎるように思える。で、日本の青春映画では定番となってしまったSNSでの炎上シーン。こういうのって、はっきり言って映画的には面白くない。追いかけて問い詰める、罵倒し合うとか、何なら殴り合うとか、人間としての躍動感が無いと、どうしても安っぽく見えてしまう。

これ、映画版の監督として「なりたい自分になれた」のだろうか。観客の共感を得る為に、敢えてこじんまりとまとめてしまったように思えてならない。もっと強引にひっかき回して欲しかった。