ShinMakita

青くて痛くて脆いのShinMakitaのレビュー・感想・評価

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
1.7
田端楓は、18になるまで他人と距離をとって生きてきた。そうすれば自分も傷つかず、相手を傷つけることも無い。そんな彼が大学に入ってすぐ、同学年の女子・秋好寿乃に声をかけられた。何かと言えば授業中に「世界平和」「みんなが武器を捨てれば戦争はなくなる」と理想論をブチまけ、クラスを寒い雰囲気にしてきた秋好は、学年で早くも浮いた存在だった。そんな彼女を突き放したい楓だったが、そう言うわけにもいかず、いつしか秋好に誘われるままサークル「モアイ」を立ち上げることになってしまう。秋好の理想実現を目標に、世界を良いものに変えていこうというボランティア活動を細々と、たった2人で続けていく中で、楓はいつしか充足感に満たされるようになる。

しかし三年後…就活も区切りがついた楓は、既に「モアイ」から遠ざかっていた。この世界に、もはや秋好は存在しない。あるのは醜く変貌した「モアイ」だけだ。モアイは大学1の巨大就活サークルとなっていた。企業とのタイアップで交流パーティーを企画し、学生たちの人脈・コネ開拓を目的としたチャラいサークルへと成り果てていたのだ。そこに秋好の理想とするものは、欠片も感じられない。楓は、三年前の素晴らしい時間を奪った新「モアイ」に復讐するため、行動を開始する。


「青くて痛くて脆い」。

以下、なりたいネタバレになる。

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サークル、就活、社会人との交流会…
普通の大学に行っていない俺からしたら、全くピンとこない世界。それでも楽しめたのは、これが普遍的なコミュニケーションの物語だから。「傷つく」「傷つける」という行為を必要以上に恐れた青年が、勝手に暴走してしまう話ですよ、端的に言えば。
アラフィフのおっさんに言わせたら、楓の傷なんか傷のうちに入らないし、復讐なんざ幼稚の極みなんだよね。社会人になったら、いくらだって利用されて捨てられる場面に遭遇しますよ。俺なんか何回も理不尽な理由で派遣先をクビになってるし。いちいち傷ついていられないですよ。人も組織も、その場の人間をいいだけ利用し捨てていくものなんだよ。この現実は変えられないんだよね。

もう一つ。ひとは成長し、現実的ビジョンを持つようになるということ。秋好の「理想との折り合いの付け方」を理解できず、1人でブリキの太鼓をやっていた楓こそが「痛い」存在なんだよな。最後に膿を出し切って終わった…と信じたいね、この話。


役者陣は、杉咲花のサイコっぽい演技がツボ。まるで色気を感じさせません。暗い雰囲気の吉沢亮はまずまず。でもどうして邦画の若者たちは何かと言えば走ったり叫んだりするのか。意味がわからない。
あと、後輩ポンちゃん役の松本穂香。この子、いま全ての邦画に出てるんじゃないのかってくらいよく見る。売れてるんだろう。
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