背中と目力で悲哀たっぷりの歪んだ演技が出来る吉沢亮と天然カリスマオーラを放つ杉咲花の当たり役映画。個人的には『君の膵臓を食べたい』よりだいぶ暗めでマイナー感満載のこちらの方が好き。
それにしても住野よる氏、相変わらずタイトルの付け方が秀逸すぎる。こちらは原作は読んでないけど映画みてる間じゅう、まさに「青くて痛くて脆い」としか言い様の無い話だ…と感じてた。ちらほら指摘されてるけど朝井リョウ氏の『何者』にも通じる若者の若気の至りの自意識過剰感とこじらせ陰キャラと偽証&擬態された陽キャラと徹底した自己完結感がないまぜになり、自分のちゃらけた私大時代を思い起こしながら色んな人に感情移入して少々疲れつつ。この話どうやって風呂敷を畳むつもりなのか…と心配していたが、最後は、ああなるほど、こうくるか…というなかなかの感慨。正直、ド直球の理想論に久々胸が熱くなる。こういう映画こそ、若い人にみてもらいたい、もやもやしながら、自分ってなに？社会ってなに？人ってなに？って思う存分考えてもらいたい、ってすごく思った。
以下ネタバレ
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楓の被害妄想と思い込みだけで降りきる歪んだ前半から、微妙に下方修正されてく後半の展開が繊細でとてもよかった。出来ればモアイの軽薄な活動シーンばかりでなく社会派的な活動もちゃんと描いてくれたらもっとよかった。あのままでは秋好の「私は変わったつもりはない。夢は今もずっと同じ」という台詞の整合性がいまいち取れてないし、団体が大きくなったことへの秋好自身の葛藤もわかりづらい。そもそもが、「理想と現実は違う」という流れだけでは楓が指摘した問題点は解決されないし、沢山の若い人が提示してきた数多の理想主義がその後具体的に何をしてゆき何を成し遂げたのか、という、一番大事なヒントもテーマから抜け落ちてしまうことになる。
ただ、「僕はお前の間に合わせ」という台詞に対してそれは違う、と強く否定できず号泣する秋好の姿は本当にリアルでとてもよかった。だからこそ、あのあとの「誰もが誰かの間に合わせ」という泣きの言葉が深く生きてくるのかな、と。
青色の好きだった楓が前半ずっと青い服を着てて、そのままモアイのTシャツが青のまま、楓だけがそこにいない(自分で選んでそこから出たくせに、どこまでも秋好のせいにする楓の歪んだ認識も含めて)、という現実がとても痛くて辛かった。秋好は楓をある部分では利用したのかもしれないけど、あの青のTシャツのことを思えばたとえ無意識でも楓をちゃんと尊重してたし、そのことに楓自身がはやくに気付いてればあんなことにはならなかったろうに、と思う。でも、ちゃんと自分のしたことと痛みを引き受けようと決めて、前を向く楓の姿勢は清々しいと思ったし、その感情と視界の変化を歩く姿勢とか目線で細かく演じ分けてる吉沢亮はやはりなかなか。あとはあれだけの顔面力なのに少し気持ち悪く見えるところも彼の過去の背景と俳優としての潜在力を感じる(誉めてる)。
ただ微笑んでいいこと言うだけで全てかっさらっていく超絶イケメンを演じる柄本佑の安定感もよかったし、プライベートでは山崎賢人と仲良しの岡山天音君のリアルで普通の友人っぽさも良かったし、松本穂香ちゃんの器用だか不器用だかわからない流されキャラもなかなかだった。細かいところに気を配る演出だったので、テーマ的にはだいぶマイナーな危うさのなかでもまとまりがとれた作品に仕上がっていたように感じる。
