Dumbo

のさりの島のDumboのレビュー・感想・評価

のさりの島(2020年製作の映画)
4.2
“のさり”とは、天草地方のことばで

「今、自分が置かれている状況は、
どんな事もすべて天からの授かりものである。
だから、目の前にあるものは
否定せずに受け入れる。」

という考え方だそうです。



前日の夜にjamさんのレビューを読んで
惹かれるものがあり、
もともとその映画館で今日観ようと思っていた
『ブラックバード』の後に
続けて観られる上映時間だったので、
衝動買いならぬ、“衝動鑑賞”してきました 笑

jamさん、ありがとうございます。



藤原季節君の出演作は初めて見ました。
アヒル口の独特な雰囲気を持つ俳優さん。
大河にも出てる、結構有名な俳優さんなんですね
テレビはほとんど観ないので知らなかった💦

“若い男”
という役名で、名前はわからない、
“ニセ将太”

ぶっきらぼうな今どきの若者だけど、
(しかもオレオレ詐欺師だから立派な犯罪者…)
それでも悪者になりきれない感じが
なんだか憎めない。

旅をしながら、行き着いた先々で、
「もしもし〜、ばあちゃん?オレだけどー」
とお年寄りに電話をかけてお金を騙し取る。
ニュースでは、
“移動するオレオレ詐欺師”
と報道されてました 笑


天草のさびれたシャッター商店街の中の
山西楽器店のおばあちゃん
少し認知症があるのかな?
わかっているのか、いないのか…?
大丈夫かな、このおばあちゃん…
と心配になる。


“たとえ「まやかし」でも、
人には必要な時がある…”


騙されたフリをしたおばあちゃんと、
騙すつもりだったけど、
おばあちゃんちが
居心地良くなってしまった若者…
二人の“優しい嘘”は、
おばあちゃんへはひとときの夢を、
若者へは新しい居場所を…
それぞれ与えてくれたんですね。


おばあちゃんの作った料理を
“うめぇ〜!!”と言って頬張る
ニセ将太。
あんなに美味しそうに食べてくれたら、
もう愛おしくなりますね。
サイダーにアイスクリーム入れて飲むのって、
子どもの頃にうちの母もよく作ってくれたなぁ…
クリームソーダみたいで美味しかったのを
思い出しました。
ニセ将太がおばあちゃんに、
「もうちょっとアイスクリーム入れてっ!」
って言うのが、なんか可愛かった。

そんな二人の奇妙な共同生活の中で、
いつしか犯罪者の若者、“ニセ将太”は
本当の孫の“将太”のようになっていく…
おばあちゃんを思いやる、
優しい孫のように…

天草で“のさり”の考えに触れた彼は、
これからどんな人生を生きていくのだろう…


地元のラジオのパーソナリティきよらさんも、
天草を愛するひとり。
彼女の声、本当にいい声。
この人の声を朝に聴いたら、
一日をさわやかに過ごせそう。
彼女も、ひょんなことからニセ将太と知り合い、
何度か会うようになりますが…

もうひとり。
イルカのチケット売場の女の子。
夜になると、シャッター商店街で
ハーモニカをふいている。
このハーモニカの音色が、
さびれた商店街の風景を
より切なく寂しく感じさせる。
ハーモニカは“ブルースハープ”
っていうんですね。
この女優さん、
本当にブルースハープの演奏者で、
本当にご本人が演奏していたんですね。
吹替かと思ってたからびっくりでした!



地元天草の人たちもたくさん出演してて、
地元愛に溢れていました。
大火という大きな災難を乗り越えてきた
天草の人たちの、
強さと優しさの原点は、
“のさり”の考え方にあるんですね。
コロナ禍の今、
ギスギスしがちな日々を過ごしている
私たちの心にも、
のさりの風が吹くといいですね。

とても優しい気持ちになれました。



たまには邦画もいいなぁ…
って言うかむしろ、
邦画もいい作品がたくさんあるから、
もっと観ないと!!
今日最初に観た『ブラックバード』も
とてもよかったんですが、
順序逆で、こちらのレビューが
先に書けてしまいました💦

ちなみに今日もこの映画館では、
先週の日曜日と同じく、
『アメイジング・グレイス』は完売でした。




今日も映画館での幸せな一人時間を
ありがとう!!
Dumbo

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