一人旅

お名前はアドルフ?の一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

お名前はアドルフ?(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ゼーンケ・ヴォルトマン監督作。

産まれてくる子どもの名付けを巡る家族内論争を描いたコメディ。

2010年にパリで初演された舞台劇をドイツで映画化したもので、産まれてくる子どもに“アドルフ”と名付けるとの発言を発端とした家族内論争の顛末を描いています。

ボン大学の文学教授:シュテファンとエリザベト夫妻、エリザベトの実業家の弟:トーマスと出産間近の恋人:アンナ、夫妻の幼馴染の音楽家:レネの5人がライン川のほとりにある一軒家に集って優雅にディナーを愉しむはずが、トーマスが産まれてくる子どもに“アドルフ”と名付けると宣言したことをきっかけに、その名付けを巡って家族内で大論争が巻き起こってゆく様子を描いたシチュエーションコメディで、『セレブレーション』(98)や『おとなのけんか』(11)のように和やかに進むはずの集いの場がみるみる崩壊していく展開にノンストップで見入るトークバトル喜劇となっています。

アドルフ・ヒトラーを連想させる“アドルフ”という名付けに対する現代のドイツ人が抱く素直な感情がよく伝わってくる密室会話劇で、世間一般的に禁忌とされる“アドルフ”という名付けを断言したトーマスに対して、義兄のシュテファンや旧知のレネは猛反論を繰り出していきます。戦後70年が経過しても、ドイツにおいては“アドルフ”という名前が国民から忌み嫌われている状況が良く分かりますし、「“アドルフ”という名前自体が独り歩きしてドイツ人のトラウマになっているから、あえて子どもに“アドルフ”と名付けてその風潮を打破したい」というトーマスの鋭い指摘&意気込みや、「もし“アドルフ”と名付けたなら、子どもが学校でいじめに遭ったり、両親が極右思想だと見なされる」という反対派の懸念にも現実味があります。

家族内論争の発端は名付けを巡る一人の軽率な発言ですが、次第に話題が家族同士の“本音&秘密の暴露大会”にエスカレートしていきます。当初の名付け論争から逸れに逸れて、相手に対して日頃から抱いていた不満や怒りを感情的にぶちまけ合っていく様子が滑稽&ユーモラスなシチュエーションコメディとなっていて、エリザベトを演じたカロリーネ・ピータースが終盤に披露する迫真の長時間熱弁は見物であります。
一人旅

一人旅