ナガエ

ネクタイを締めた百姓一揆のナガエのレビュー・感想・評価

ネクタイを締めた百姓一揆(2017年製作の映画)
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少しの間だけだけど、岩手県に住んだことがある。こんな話は知らなかったので、驚いた。

国鉄が新幹線の建設を発表し、全国各地でどこに駅が作られるのかが検討されていた。1県で3駅が条件とされていて、花巻市はその3つに入れるかどうかヤキモキしていた。そしてついに発表となった時、建設予定地に花巻市の名前はなかった。それに落胆した市民たちが、用地買収対策を先回りして行ったり、市長や知事を動かしたりしながら、元の計画にはなかった「新花巻駅」の建設を成功させるまでの14年間を描く映画です。

事実としては面白かったのだけど、ちょっと映画としてのクオリティには大いに難があった。

とにかく、何よりも問題だと思うのが、「何を言っているのか聞き取れない」こと。これは決して方言をバカにしているわけではないので誤解しないでほしい。確かに、方言でわかりにくくなっている部分もあると思うのだけど、より大きな問題は他にある。

まずは、役者さんたちの滑舌の問題。おそらくこの映画には、役者の経験がある方というのはほとんど出てないのではないかと思う。素人さんか、ちょっと演劇をやったことがあります、という感じの人ばかりが出演しているのではないかと思う。演技そのものも下手っぴなのだけど、それ以上に、セリフを上手く言えていないという印象が強かった。セリフの一部だけ早口になったり、滑舌そのものがあまり良くなかったりと、セリフをちゃんと伝えるという点で問題の多い役者さんが多かった印象だ。

さらに問題なのは、これは撮影時の問題なのか上映時の問題なのか僕には知識がないのでわからないのだけど(でもまあ普通に考えれば撮影時の問題だと思う)、音声の録音状態に非常に問題があると思う。環境音がうるさい場面などでは、環境音のレベルが大きすぎて、人が喋っている声がそもそも聞こえない、ということがよくあった。他にも、環境音が大きいようには思えないような場面でも、謎の音(何の音かわからない。風とかかなぁ)によって人の声がかき消されてしまっているように感じることもあった。

そういうような理由が積み重なることで、とにかく、「どんなセリフを喋っているのか、そもそも観客に聞き取れる形で提供できていない」というのが、ちょっと致命的な問題だったなぁ、という気がしました。役者さんの演技は、役者さんを集めることの難しさを考えると仕方ないと思う部分もあるのだけど、音響に関しては技術的な問題だから、もうちょっとどうにか出来たんじゃないかなぁ、という気がします。

事実としては面白いのだけど、映画としてはちょっとお粗末だったので、なかなか人に勧めにくいというのがもったいないな、という気がします。
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