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滑走路のtoshiのレビュー・感想・評価

滑走路(2020年製作の映画)
4.2
過酷な労働に苦しむ官僚、夫との生活や将来が不安になる切り絵作家、イジメられた同級生を助けた事で今度は自分が的となってしまった中学生・・・。彼らが苦しみもがく様を描いた重い作品かと思っていました。
重いは重いのだけれども思っていたのとは違った作品で良い意味で裏切られました。

官僚の鷹野(浅香航大さん)、切り絵作家の翠(水川あさみさん)、イジメに合う学級委員長(寄川歌太さん)、全く異なる世界で苦悩していると思いきや3つの点が1つの線になって進んでいく内容に心惹かれました。
鷹野が非正規雇用問題が原因で自死した同い年の男性に興味を持ち、何故彼が自死したのか向き合い始める事で3つの点と思った物語がじわじわ混じり合います。
一つ一つ混じり合っていく事で観ている側も衝撃を受けますが、進む先にはどうか救いがあって欲しいという願いも生まれてきました。

この3人にどうか希望を見出して欲しいと思うのですが、うち1人については設定が今作のキモとなっておりこちらの気持ちとしては複雑でした。
でもあのラストは素晴らしかったです。あの時のあのラストからどうかこの後はしばらく希望ある日もあったと信じたくなりました。

学級委員長に放った元いじめられっ子の言葉。心が痛みます。二人とも気持ちは分かるけど、中学生の子供じゃ判断付かないし、壮絶なイジメにあっているのだから(いたのだから)何が正解かも向き合う事も出来ません。ただ一つ言えるのはこの2人はどちらも悪くないしどちらのせいでもない。完全たる悪はイジメている子供達。それが正解。やはりいじめというものは存在してはならないと改めて思いました。

復唱しますがラストがホントに素晴らしかったです。おじさんの私の胸にぐっさり刺さりました。

【余談】
学級委員長役の寄川歌太さん。子供の頃の山Pに何となく似ていて可愛らしかったです。
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