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TITANE/チタンのSPNminacoのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
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フェティッシュでヌメヌメぐちゃぐちゃにグロテスクなボディホラー監督ジュリア・デュクルノーは、デヴィッド・クローネンバーグの後継者?(いや、息子ブランドン・クローネンバーグがいるけどさ)なにせ今回はクルマと金属がフェティシズムの対象。皮膚感覚の痛みも含めてクローネンバーグの『クラッシュ』を思わせる。
けどそれよりも『ザ・フライ』、メインは身体改造だった。主人公アレクシアは埋め込んだチタンに始まり、身ごもって大きくなる腹、殺人も一種の改造手術だと思う(鉄の棒や椅子とか埋め込んでる)。更に、顔面と性別を改造して見知らぬ他人の「息子」となり、その父親はステロイド注射でマッチョに肉体改造する消防士で、アレクシアを息子らしく改造しようとする。
ところが、そこまでのクローネンバーグ的ホラー展開から後半は違う様相を見せていく。そうか、これざっくりと「ピノッキオ」、もしくは「フランケンシュタイン」じゃないか。
アレクシアは木じゃなくて金属でできた子ども。嘘をつくたび大きくなる腹。長い間捜してきた「息子」を取り戻したヴァンサン・ランドンはジェペット父さん(或いはフランケンシュタイン博士)。彼と息子のどこか歪んだ関係は、親子というより創造主(自分で神と言ってる)とその作品。身体改造はそれまでにない新たな生命体を作り出す行為。アレクシアもまた、望んではいないものの、その創造主となろうとしているのだった。
というわけで、クジラの腹から出てくる奇跡の子と救われる父さん。人として愛され召されるピノッキオのレクイエム。結局、ピノッキオと古典モンスター映画の合体みたいなお伽噺、斬新なようで古いオチだった。妊娠自体がボディホラーたり得るけど、これだとバチが当たったように見えるし、ジェンダーを越えてるようで産む身体は女だしモンスターの花嫁みたい。
クルマの柄から火災現場まで、炎は地獄の業火というより錬金術なのかな。グロテスクな特殊効果技術はすごい。TシャツのNever Give Upもすごい。人工呼吸はマカレナよりステイン・アライヴが合ってると思うな。
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