TAK44マグナム

オールド・ガードのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

オールド・ガード(2020年製作の映画)
3.9
歴史の影に不死者あり。


Netflixオリジナルのアクション大作。
肉体も精神も屈強で最強なヒロインを演じさせたら天下一品のシャーリーズ・セロンが主演。
「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」でYouTuberに憧れる悪党ジンガロを怪演したルカ・マリネッリも戦士の一人を演じております。


数百、数千年にわたって影から世界平和の為に戦いを続けてきた不死能力を持つ戦士たち「オールドガード」。
銃弾に倒れても、刃物で切り裂かれても傷が再生し、息を吹き返す彼らは、何故自分たちが不死者となったのかも分からない。
ただ、自分たちの正義に則って、影から世界の危機を救ってきていた。
しかし、リーダーであるアンディ(シャーリーズ・セロン)は疲れ果て、「何をどうしたところで世界は救えやしない」と口にする。
それでも信じる正義のために、元CIAエージェントが持ちこんだ事件解決のために動きだすが、それは彼らの秘密を暴くための罠であった。
彼らの存在を知った巨大な製薬会社がその能力を解明するために捕縛しようと迫る。
仲間を奪われたアンディは「新人」と共にその行方を追うのであった。


大まかな筋に新鮮さはありませんが、登場人物それぞれのディティールが程よく描かれているのでドラマティックに感じられました。
深い孤独を誰よりも知るアンディをはじめ、台詞の応酬から「不死であるからこそ知る苦悩」がキチンと伝わってきます。
古参のメンバーだけでなく、不死者になったばかりの新人をメインにすえることで、これから何百年も生きなければならない事に対する「言い知れぬ怖れ」を描きだし、「何百年も死なないのがハッピーとは限らない」という現実を突きつけてくるのです。
長い間に、強固だったはずの自分の存在理由が曖昧になってゆく・・・自分という存在がたとえ無になったとしても死ぬことが許されないのは相当辛いでしょうね。
映画を観れば分かりますが、すごく重要な要素が後半加わってきます。
それは不死者にとって最も大きな「ルール」なのですが、こればかりは実際に不死者になってみないと「自分だったらそうなった時、どう思うか?」は想像もつきません。
恐怖で慄くか、もしくは安堵するかもしれませんね。


原作はグラフィックノベル。
いかにもそれらしい展開で、ラストもMCU作品みたいに「続く」となるので続編に期待。
日本でいえば「亜人」が最も設定が似通った作品ですが、アプローチが違います。
「亜人」は不死者という存在へのアプローチは同じようなものですが、不死という特徴を活かした緻密な戦略の応酬を楽しむ感が強い。
本作はバトルシーンも多いけれど、戦いそのものよりも登場人物の苦悩や存在意義を重視したドラマづくりが特徴です。
シャープで大胆なアクションを目当てに観るのも良いですけれど、シャーリーズ・セロンが演じるほどのキャラクターなので、その深い淵を探るような鑑賞をお勧めします。

昨今のハリウッドらしくポリティカルコレクトネス、ジェンダー問題に強く言及する比重も大きめで、それがおそらく製作されるであろう続編への引きにも影響しています。
MCU作品の如く、(ベロニカ・グゥの存在感も相まって)ものすごく強烈な引きなので、これは是非とも早く続編が観たい欲求に速攻で駆られました。
Netflixオリジナルのアクション映画の中でも迷いなくお勧めできる良作です。


NETFLIXにて