ふぇりな

ヤクザと家族 The Familyのふぇりなのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.0
新年早々幸運なことに試写会に当たり、一足早く観させていただくことができました。2021年初の劇場鑑賞作品です。
もともと綾野剛さんのファンなのですごく楽しみにしていましたが、期待通りの素晴らしい作品でした。

俳優陣の演技、キャラクター、ストーリー、構成、構図、全体の雰囲気や質感、演出、そして主題歌をはじめとした音楽…そのどれもが丁寧に作り上げられた作品でした。
136分というのは長めだと思いますが、全く中だるみも感じず、最初のカットから最後の「familia」が終わるまで、飽きずに夢中で観ることができました。藤井監督の作品は初めてでしたが、お若いのに(年齢は関係ないとは思いますが)すごい監督だなと思います。

三部構成になっているこの作品ですが、それぞれの場面で大きく異なったキャラクター性を持つ山本を、綾野さんはさすがの演技で魅せていました。彼の出演作を観るたびに「誰!?」と思ってしまう私ですが、今回は同じ作品の中でも「誰!?」と思ってしまうほどに変化が大きく、新たな彼を観ることができて感動しました。
皆さん素晴らしい演技でしたが、特に磯村勇斗さんと市原隼人さんの演技にも驚かされました。どちらも難しい役どころだったと思いますが、見事に演じ切っていて、魅力的でした。

どのシーンも夢中で観ていましたが、特に印象的だったのは「ハグ」のシーンです。作中で何度か登場しますが、そのどれもがすべて違った状況や人、違った感情でできています。しかし、そのどれもに共通するのは「愛」なのではないかと感じました。穏やかでも、苦しくても、切なくても、辛くても、必ず愛のある抱擁だったと思います。

そもそも、綾野さんと舘さんがトークイベントでおっしゃっていたように、この映画は「愛」そのものであるとも感じました。ヤクザ映画ということで抵抗がある方もいるかもしれませんが、様々な家族の形に焦点を当てた、海のように深い愛の物語でもあります。家族として強い絆で結ばれているけれども、だからこそ受け入れられないこともある…そんな愛ゆえのままならない現実に胸を打たれる二時間でした。

とにかくリアル志向で、登場人物の思いが痛いほどに伝わってきました。ヤクザであることを完全に肯定しているわけではありませんが、彼らの苦悩は実際にあることだとも思います(どの程度現実に即しているのかはわかりません。ただ、現実はここまで苦境に陥ってはいないのでは?と個人的には思いました)。ただ美化する映画ではなく、醜い部分もリアルに、そして誠実に描いている姿勢がとてもよかったです。

愛を求め、もがき苦しみながらも必死で突き進んできた山本賢治の生きざまから目が離せない、鮮烈な作品でした。今年初めに、映画館で贅沢な体験をさせていただけたこと、本当に幸せでした。
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